ピルシカイニド(サンリズム)とベラパミル(ワソラン)の違い について頓服薬としての視点から整理する。
ポイントは、脈に影響するのか?しないのか?である。
おまけ:心房細動と心拍数
ピルシカイニド(サンリズム)とベラパミル(ワソラン)の違い
リズムコントロールとレートコントロールを考える必要がある。
通常は健康な人は、心拍数と脈は同じであるが、
不整脈が起こると必ずしも1:1ではない。
①ピルシカイニド(サンリズム®)について
脈拍のリズムを正すイメージ(リズムコントロール)
・ Vaughan-Williams分類では、Ic型に分類されている
・特徴的なものが、「Naチャネルのみ」を遮断するということ
↓
刺激伝導速度を抑制する
↓
「脈泊」に影響しない
↓
通常「脈をゆっくりする作用がない」
※このイメージはとても大切
このおかげで、血中濃度が高くなったときの心外性副作用がほとんどない
※Ⅰ群の中には、Kチャネル抑制作用を有する薬剤もある
↓
Kチャネル抑制作用によりQT延長を引き起こす可能性がある
例:ジソピラミド(リスモダン®)、シベンゾリン(シベノール®)
・半減期(4時間程度)が短く、「線形」の体内動態を示す
↓
体から排出されるのが速い
・腎排泄型(他の不整脈の薬より透析性がある。30%程度)
※腎臓が悪い人には、使いにくい
・催不整脈作用に注意
強いナトリウムチャネル抑制作用があるため、
伝導障害により「リエントリー性頻拍」や「徐脈」を引き起こすことがある
②ベラパミル(ワソラン®)について
心拍をゆっくりさせるイメージ(レートコントロール)
・ Vaughan-Williams分類では、Ⅳ型に分類されている
↓
Caチャネルを抑制する
↓
心筋におけるカルシウムイオンの筋細胞への流入を抑制
↓
房室結節に作用して房室の伝導を遅延させる
↓
心臓の拍動を遅らせる作用がある
・半減期(2~7時間)であり、肝代謝
③使用例
・「心房細動」では、脈が早くなったりするのでピルシカイニド(サンリズム®)だけではなく、ベラパミル(ワソラン®)を重ねる医師もいる。
「脈」がどうかで判断が必要だろう。
個人的に経験した症例
先日、来局された患者さんは、最初サンリズム®頓服のみだったが、
大きな病院で精密検査を受けて「心房細動」が分かった。
その後、イグザレルト®、メインテート®が定期薬となり、
サンリズム®、ワソラン®が頓服となった。
(日常の脈拍が100を超え、不整脈自覚時に150程度ある方)
服薬指導において、「脈拍」の確認をして頓服薬の意味を説明すると
よいと個人的には思う。
心房細動の心拍数調節の目標について(ガイドラインより)
緩やかな目標心拍数で開始する
・安静時心拍数110拍/分未満
自覚症状や心機能の改善が見られない場合
・安静時心拍数80拍/分未満
・中等度運動時心拍数110拍/分未満
とされている。
※心房細動と心拍数(ガイドラインより引用)
「心房細動中に130 拍/min 以上の心拍数が持続すると, 左室拡張不全が生じうっ血性心不全を惹起する.器質的心 疾患がなくても,高頻度の心拍数の心房細動が持続すると 心不全となる.これを予防するために心房細動中の心拍数 を130 拍/min 以上にしないことが重要である」
→心房細動の人で頻脈が続くと心不全を起こしてしまう
参考資料
サンリズム®添付文書・インタビューフォーム
ワソラン®添付文書・インタビューフォーム
心房細動治療(薬物)ガイドライン(2013年改訂版)