血圧の薬(カルシウム拮抗薬)をもらう際に、グレープフルーツジュースは注意とか
言われたことがある人もいると思う。
個人的にはあまり強く言ったことはないが
質問としてはよく受けるので
「グレープフルーツ以外は良いのか・・・悪いのか・・・」
「何が問題なのか?」
「どれくらい時間を空ければ良いのか?」
ちょっと整理する。
①グレープフルーツと相互作用
グレープフルーツジュースとの薬の相互作用を考える上で
グレープフルーツ(ジュース)に含まれる「フラノクマリン類」が
相互作用に関与していることが分かっている。
今回は、P糖タンパク質とCYPについて
グレープフルーツとP糖タンパク質について
グレープフルーツジュースの成分がP-糖タンパク質による
薬物輸送を阻害することが知られている。
P-糖タンパク質の基質と競合阻害をすると考えられている(詳細不明)
↓
競合阻害なのでCYPへの阻害ほど強くはない
※カルシウム拮抗薬はP-糖タンパク質の基質ではないため、あまり重要ではない。
※ビラスチン(ビラノア®)の吸収阻害はおそらくこれだが、詳細は分かっていない
グレープフルーツとCYPについて
小腸上皮細胞に存在するCYP3A4を不可逆的に阻害することにより、
薬物の吸収が増大するのだ。
(実は、他のCYPも阻害する・・・)
↓
つまり、予定よりも効果が高くなる
↓
効きすぎたり、副作用が出たりすることがあるので注意。
※グレープフルーツジュースによる相互作用は小腸でしか起こらない。
※小腸に存在するCYPはほとんどがCYP3A4だからCYP3A4が注目される。
②具体例~含むものと含まないもの~
フラノクマリン類を含むものが一応注意ということになる
フラノクマリン類が含むもの
グレープフルーツ、スウィーティー、ダイダイ、
ザボン(ぶんたん、バンペイユ)、 サワーオレンジなど
※熊本ならバンベイユが多いかな
フラノクマリン類を含まないもの(影響を受けない)
バレンシアオレンジ、温州みかん、かぼす、 レモン、オレンジジュース、柚子、はっさく
※普通のみかん・レモン問題ない
補足
グレープフルーツジュースの阻害成分フラノクマリン類は、
「果肉」に大部分含まれている。「 種」や「皮」にはあまりない。
③どれくらいの時間影響があるのか?
こんな質問を受けたことがある。
「グレープフルーツジュースを飲んで、
どれくらい時間をあけて薬を飲めばよいですか?」
↓
「あまり影響がないから気にしなくていいですよ」 とか
「薬は朝だけだから、夜ジュースを飲みましょう」
と答えるのは簡単だし、不親切・・・
一応何か具体的な例を調べてみることにした。1つデータを紹介(かなり古め)
「グレープジュースを摂取した直後から4時間後までフェロジピン(スプレンジール®、カトラジール®) の代謝が著しく阻害される」という報告がある。
もちろん、そこまで影響を受けない血圧の同タイプの薬もある。
ただし、心配する人やデータを知りたい医師もいると思う。
「グレープフルーツジュース飲んだあと、少なくとも4時間以上あけることが望ましい」
ということは分かっているので、質問などあれば伝えてはどうだろう
上記内容のデータを修正(2022年)
グレープフルーツのCYP阻害自体が不可逆的阻害であるため、CYPが新しく体の中で作られる必要がある。
その部分を調べると・・・身体の中のCYP3A4が新しく作られるまでの時間が、3日から4日かかる。
そのため、可能性として、それくらいの期間は空ける必要があることになる。
今のところの結論としては、「基本的には3日から4日は、グレープフルーツの影響が出る」
また、阻害の程度は薬剤によるのでグレープフルーツの飲用をどうするかは、しっかり話し合うこと。
※阻害されたCYP3A4の機能が戻るまでの期間は、3日で75%程度、4日で90%程度。
参考文献
Lundahl J, Regardh CG, Edgar B, et al : Relationship between time of intake of grapefruit juice and its effect on pharmacokinetics and pharmacodynamics of felodipine in healthy subjects . Eur J Clin Pharmacol 49 : 61-67 , 1995
Saita T et al. Screening of furanocoumarin derivatives in foods and crude drugs by enzyme-linked immunosorbent assay. Jpn. J. Pharm. Health Care Sci. 2006; 32:693-699.