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栄養・サプリメント

イノラス配合経腸用液 の特徴について~他の経腸栄養剤(エンシュア、エネーボ、ラコール)との違い(たんぱく質量も確認)~

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イノラス配合経腸用液 の特徴について~他の経腸栄養剤(エンシュア、エネーボ、ラコール)との違い(たんぱく質量も確認)~

名前の由来
Enteral Nutrition + Oral Nutritional Supplements
ONS(経口的栄養補給)にも適した経腸栄養剤
それぞれの頭文字をとってイノラス®ENORAS

アルミパウチの製剤であるため、缶に入っている栄養剤より
廃棄の負担が少ない。
※意外と大切→施設だと缶のゴミの量がすごいことになる。

各製剤の温め方や保存方法などはこちらを参照

①カロリーが高い

1mlあたりのカロリーが高い。
高濃度(1.6kcal/mL)の半消化態経腸栄養剤である。
1パウチで300kcal摂取することができる。
※ラコールNF場合は1kcal/mlなので300kcal摂取するためには300ml必要
→イノラス®は187.5mlで済むため量が少ない。経口に向いている

※量が少ないので経管の場合、投与時間が短く済む。
施設においても栄養剤を与える時間が負担になったりしている。

浸透圧に注意

イノラス®は、カロリー当たりの液量が少ないため便利ケースが多い。
ただし、浸透圧が他の栄養剤より高いため・・・
経管の場合の注入速度に注意が必要である。注入速度が速いと下痢になったりする可能性がある。その場合は、注入速度をゆっくりしたり、それでも下痢が続く場合は浸透圧の低い製剤に替えると改善する可能性があるので試してほしい。

【参考:各製品の浸透圧】
・イノラス®配合経腸用液:約670mOsm/L
・ラコール®NF配合経腸用液:330~360mOsm/L
・エンシュア®:約330mOsm/L
・エンシュア®H:約540mOsm/L

脂質が多め

イノラス®のエネルギー比率は、
たん白質16%、脂質29%、炭水化物55%である。
実は、細かい話だが脂質が多めの配合になっている。
量当たりのカロリーが高い理由であるが、脂質が多いため
脂質代謝が苦手な人など・・・下痢が止まらない場合は、
ラコール®など(脂質20%)別の製品に切り替えるのも良い。

※イノラス®には1パウチ50mgのカルニチンが含まれている。
これは、脂質を多く配合しているため・・・
脂質の代謝を上げるという目的もある。

②微量元素を多く含む

1パウチ300kcalの投与で
1日に必要なビタミン・微量元素の約1/3摂ることができる。
3パウチで1日分の量をまかなえる。
個人的にこれが良いと思う点である。

従来のものは、1日のカロリー摂取を約1600kcalを目標に設計されており、
1600kcalぐらい摂らないとビタミンや微量元素も1日分取れないのだ。

ラコール®NF経腸溶用液であれば400mlを4パウチ
ラコール®NF配合経腸用半固形剤であれば300gを5~6バッグ必要
これが、イノラス®なら3パウチでOK

※ヨウ素が配合されているものは、今までの栄養剤には入っていなかった。
他にもセレン、カルニチンを含む。
ヨウ素は、小児の方が欠乏しやすい。

※ビタミンKについてはワーファリン®と相互作用もあるため
どの経腸栄養剤もあまり量が入っていない。

※イノラス®の例ではないが、経腸栄養剤を出した場合
PT-INRが微妙に変わってしまいワーファリン®の量の調節が
必要となる例を多く目にする。
ワーファリン®の量で0.25mgから0.5mgぐらい変わるイメージ

補足:ヨウ素が入っている理由

重症心身障害児(者)は、ずっと経管栄養を必要とするため、
栄養素のヨウ素が欠乏してしまうことが多い。
イノラス®の開発にあたり日本小児内分泌学会の方から「ヨウ素」を
入れて欲しいと連絡があったらしい。
(メーカー問い合わせより)

③たんぱく質を多く含む

1パウチ300kcalあたり、たんぱく質量を12gとしている。
日本人の食事摂取基準目標値(2015年度)を参考に
たんぱく質16%
脂質29%
糖質55%
含んでいる。
mlあたりのたんぱく質量は多い。
12g/187.5ml

他の栄養剤のたんぱく質量について

エンシュア®8.8g/250ml
エンシュア®H13.2g/250ml
ラコール®NF配合経腸用液8.76g/200ml
ラコール®配合経腸用半固形剤13.14g/300g
エネーボ®13.5g/250ml

おまけ:フレーバーについて

イノラス®配合経腸栄養剤で用意されているのは、
リンゴ味、ヨーグルト味、コーヒー味、イチゴ味
(2021年時点)

加齢に伴う味覚の変化は、高齢者になると味蕾の総数が落ちてくる。
その中でも「酸味」に関しては比較的感じやすい。
今までの栄養剤は、「甘味」に頼ってきた。
しかし、「酸味」を意識した設計となっている。
味覚が落ちてきている人にも分かりやすいように設計されている 。

参考資料
エンシュア®、エンシュア®H添付文書
エネーボ®添付文書
ラコール®経腸溶用液添付文書インタビューフォーム
ラコール®経腸溶用半固形剤添付文書インタビューフォーム
イノラス®添付文書インタビューフォーム