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不育症(recurrent pregnancy loss)(原因)と低用量アスピリン(使用する意味)について

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不育症(recurrent pregnancy loss)(原因)と低用量アスピリン(使用する意味)について

不育症とTLCについてはこちらを参照

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①不育症(recurrent pregnancy loss)とは?

「生殖年齢の男女が妊娠を希望し、
妊娠は成立するが流産や早(死)産を繰り返 して生児が得られない状態
妊娠22週以降の胎内死亡や死産を繰り返す症例も包括する概念」

※流産:年齢と共に増加する。
30歳から34歳では15%
35歳から39歳では25%
40歳から44歳では51%
45歳以上では75%

※不育症の頻度も年齢と共に増加する
26歳から35歳くらいまでは20%で横ばい
それ以降はだんだん増加していく 不育症の原因は様々であり、
今回は割愛 胎児側、母体側、両親に由来するものなどがある

原因

子宮形態異常(7.1%)
甲状腺異常(6.6%)
染色体異常(4.8%)
抗リン脂質、抗体異常(9.3%)
凝固第Ⅻ因子欠乏(6.9%)
プロテインC欠乏(0.3%)
プロテインS欠乏(7.9%)
PE抗体陽性(23.5%)
原因不明(64.2%)

PE:フォスファチジルエタノラミン

プロテインS欠乏症に注目すると

日本人のプロテインS欠損の頻度は約2%で、欧米人の約10倍
日本ではプロテインS欠損者の9割が10週未満の初期流産患者

補足

流産を2回続けて経験した場合:反復流産
3回異常の場合:習慣性流産

②不育症と低用量バイアスピリン

「抗リン脂質抗体陽性」、「第Ⅻ因子低値」、「プロテインS低値」、
「プロテインC低値」
の妊婦に用いられる。
上記の原因から合計すると24~25%程度

※「抗リン脂質抗体陽性」の妊婦に対するエビデンスは様々で否定的なものもある。
抗リン脂質抗体症候群の人は血栓が動脈にも静脈にも出来やすいため
良いという意見もある。

日本産婦人科医会では、
「抗リン脂質抗体症候群に該当する習慣流産の患者にヘパリン・アスピリン併用療法として用いる場合にのみ保険適用」
と説明されている。

では・・・他の場合は?「第Ⅻ因子低値」、「プロテインS低値」、「プロテインC低値」など

厚労省と文科省から発表されている。
ほかの理由で用いる場合はすべて研究的治療だとされており・・・
「人を対象とする医学系研究に関する倫理指針(2017 年2 月一部改正)」を遵守し、
適応外使用として施設内倫理委員会の承認を得て、
「測定と治療が出産率に貢献するかはわからない」ことを説明したうえで、
同意書を取得して行うとされている。

使用する意味

抗リン脂質抗体が体内に存在すると、胎盤に血栓が出来やすくなってしまう。
血流が滞り、流産や死産を引き起こす。
それ以外の上記凝固因子異常も同じ理由で低用量バイアスピリンが用いられる。
色々な理由が報告されているが分からない面も多い。
妊娠前の高温期から用いる。
添付文書上28週まで
状況(医師や病院の判断)により36週~39週までのこともある。
(分娩の1週間前まで。)

バイアスピリン®の添付文書上の記載

「出産予定日12週以内の妊婦には投与しないこと.」
[妊娠期間の延長,動脈管の早期閉鎖,子宮収縮の抑制,分娩時出血の増加につながるおそれがある.海外での大規模な疫学調査では,妊娠中のアスピリン服用と先天異常児出産の因果関係は否定的であるが,長期連用した場合は,母体の貧血,産前産後の出血,分娩時間の延長,難産,死産,新生児の体重減少・死亡などの危険が高くなるおそれを否定できないとの報告がある.また,ヒトで妊娠末期に投与された患者及びその新生児に出血異常があらわれたとの報告がある.さらに,妊娠末期のラットに投与した実験で,弱い胎児の動脈管収縮が報告されている.]

「妊婦(ただし,出産予定日12週以内の妊婦は除く)又は妊娠している可能性のある婦人には,治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること.[動物実験(ラット)で催奇形性作用があらわれたとの報告がある.妊娠期間の延長,過期産につながるおそれがある.」

参考資料
日産婦編 産科婦人科用語集・用語解説集 改訂第3版
齋藤 滋,他.厚生労働省班研究報告、2010
Nyobo-Andersen, BMJ, 2000
バイアスピリン®添付文書、インタビューフォーム