α-グルコシダーゼ阻害剤 の副作用として 「おなら」が増えるというものがある。
ボグリボースを服用している人から「おなら」が沢山出て気になると言われた。
出るの自体も嫌だが・・・臭いも嫌だと・・・
たしかに・・・
この薬のせいで「臭いのか?」と聞かれたのでざっくりまとめることにした。
ポイントは、α-グルコシダーゼ阻害剤が直接の臭いの原因ではない。
通常は時間経過と共におならの頻度は改善する。
改善しない場合は、対策が必要だということ
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①おならの「臭い」と「臭くない」とは?
善玉菌と炭水化物
炭水化物(糖類・食物繊維)は、乳酸菌などの「善玉菌」による分解で
水素やメタンの「においのない」ガスが産生される。
悪玉菌とタンパク質
タンパク質は、ウェルシュ菌などの 「悪玉菌」による分解で
「臭い」のある硫化水素を産生する。
②α-グルコシダーゼ阻害剤 と「おなら」
α-グルコシダーゼ阻害剤は、2糖類から単糖類への分解を阻害し、
糖の小腸での吸収を抑制する。
↓
2糖類のまま大腸にいき、ここで菌によって分解される
↓
つまり、糖類由来の「おなら」
また、おならが増えるということは、消化管運動が正常だという判断にもなる。
↓
理論的には臭くないはず・・・
↓
もし薬を飲んでいて 臭かった場合、α-グルコシダーゼ阻害剤のせいではなく、
別のものが原因だろう(食事の影響とか)
③副作用としての頻度
おならに関して言えば、ミグリトールが一番少ない
ボグリボース(ベイスン®)の場合
下記の添付文書内容を確認すると、主な副作用に書いてあり添付文書上の
表を見ると5%以上の頻度とある。
糖尿病の食後過血糖の改善の場合
「承認時までの試験では1日0.6mg又は0.9mgを投与した965例 中154例(16.0%)に、製造販売後の使用成績調査(再審査終了時点)では4,446例中460例(10.3%)に臨床検査値の異常を 含む副作用が認められている。承認時までの試験における 主な副作用は下痢(4.0%)、放屁増加(4.0%)、腹部膨満 (3.5%)等であった。」
耐糖能異常における2型糖尿病の発症抑制の場合
「承認時までの試験では1日0.6㎎を投与した951例中452例 (47.5%)に、製造販売後の特定使用成績調査(再審査終了時点)では713例中55例(7.7%)に臨床検査値の異常を含む 副作用が認められている。承認時までの試験における主な 副作用は鼓腸(17.4%)、腹部膨満(13.1%)、下痢(12.0%)等であった。」
※耐糖能異常における2型糖尿病の発症抑制の場合
0.2mg製剤のみしか適応がないので注意すること
ミグリトール(セイブル®の場合)
副作用の表の5%以上のところに記載はなく、下記の1.2%というところからも
ボグリボースよりは頻度は少ない。
「国内で実施された臨床試験において、1030例中、副作用が報 告されたのは519例(50.4%)であった。主な副作用は鼓腸197 例(19.1%)、下痢188例(18.3%)、腹部膨満153例(14.9%)、 低血糖80例(7.8%)であった。[効能追加時]
国内で実施された製造販売後調査(使用成績調査及び特定使用 成績調査)において、3997例中、副作用が報告されたのは552 例(13.8%)であった。
主な副作用は下痢158例(4.0%)、低血糖117例(2.9%)、腹部膨満89例(2.2%)、
放屁46例(1.2%)等であった。[再審査終了時]」
アカルボース(グルコバイ®)の場合
添付文書における副作用
→5%以上の欄に記載がある。
また、おならに関しては時間と共に消失することが多いと書かれている
「本剤の主な副作用である「鼓腸・腹部膨満」及び「放屁増加」等の症状は
本剤の薬理作用である 腸管内における糖質の消化・吸収遅延により、
未消化の糖質が大腸に達し腸内細菌によって分解発酵された際に
生じたガスに起因すると考えられる。
これらは一般に時間の経過とともに消失することが多いが、症状に応じて減量あるいは消化管内ガス駆除剤の併用を考慮し、高度で 耐えられない場合は投与を中止すること」
参考資料
ベイスン®、セイブル®、グルコバイ®の添付文書、インタビューフォーム