知っておいた方がいいことをざっくり整理
低亜鉛血症とガイドラインは、こちらの記事を参照のこと
ノベルジン®についてはこちらの記事を参照のこと
①低亜鉛血症とは?
亜鉛欠乏の診断指針によると、
亜鉛欠乏症は、「亜鉛欠乏の臨床症状」と「血清亜鉛値」によって診断される。
症状と採血結果が必要である。
亜鉛欠乏症の症状があり、血清亜鉛値が亜鉛欠乏または潜在性亜鉛欠乏であれば、亜鉛を投与することが推奨されている
診断基準
1. 下記の症状/検査所見のうち1項目以上を満たす
1) 臨床症状・所見
皮膚炎、口内炎、脱毛症、褥瘡(難治性)、
食欲低下、味覚障害、
発育障害(小児で体重増加不良,低身長)、性腺機能不全、不妊症
易感染性、貧血
2)検査所見
血清アルカリホスファターゼ(ALP)低値
2. 上記症状の原因となる他の疾患が否定される
3. 血清亜鉛値
3-1:60µg/dL未満:亜鉛欠乏症
3-2:60~80µg/dL未満:潜在性亜鉛欠乏
血清亜鉛は,早朝空腹時に測定することが望ましい
4. 亜鉛を補充することにより症状が改善する
Definite(確定診断):
上記項目の1.2.3-1.4をすべて満たす場合を亜鉛欠乏症と診断する.
上記項目の1.2.3-2,4をすべて満たす場合を潜在性亜鉛欠乏症と診断する.Probable:亜鉛補充前に1.2.3.をみたすもの.亜鉛補充の適応になる.
低亜鉛血症の症状
例えば、以下のような症状が知られている。
特に、薬物治療を行う際は、味覚障害の改善に処方されることも多い
・皮膚炎、脱毛(体内の約8%が含まれる)
・貧血(赤血球の分化に使われる)
・味覚障害(味蕾内に亜鉛酵素が多く含まれる)
・発育障害(成長ホルモンに関係している)
・性機能不全(男性の不妊症と負の相関がある)
・食欲低下(消化管の運動性の低下)
・易感染性
※「皮膚症状」、「胃腸関係」、「発達」や「性機能」、「貧血」などに関係している
治療
亜鉛として
成人50~100mg/日
小児1~3mg/kg/日または
体重20kg未満で25mg/日
体重20kg以上で50mg/日
上記を1日2回で食後に経口投与する。
症状や血清亜鉛値を参考に投与量を増減する。
※ノベルジン®に関しては別の記事でまとめる
②どんな疾患で亜鉛が低くなる?
・慢性肝疾患(慢性肝炎、肝硬変)
・糖尿病
・慢性炎症性腸疾患
・腎不全(ネフローゼ症候群、腎不全)
・溶結性貧血
・血液透析
※低値になりやすい人は下記のような人である
・低出生体重児
・妊婦
・高齢者
・フィチン酸、食物繊維の過剰摂取
※フィチン酸を多く含むもの
非精製の穀物(玄米)、豆類(ごま、大豆、とうもろこし)、小麦
③亜鉛欠乏を引き起こす薬剤
亜鉛欠乏を起こしうる薬剤は多いので、とりあえず少しだけ
下記に示す。
金属と結合しやすい薬剤(キレート作用)は注意が必要である。
長期服用の場合は、服薬指導の時に
「食事はおいしいか?」「食欲はあるか?」「味はちゃんとするか?」
など尋ねてはどうだろうか。
例)
・L-ドーパ(マドパー®、メネシット®など)
・炭酸リチウム(リーマス®)
・アロプリノール(ザイロリック®)
・カルバマゼピン(テグレトール®)
参考資料
亜鉛欠乏症の診療指針 2018、一般社団法人 日本臨床栄養学会
日本人の食事摂取基準(2015)
ノベルジン®添付文書、インタビューフォーム