レニン活性(PRA)の診断の意義とレニンについてまとめる。また、レニン活性に関係がある病態の例を述べる。
有名ではない検査項目ではないが知っておくと良い
おまけ:レニン活性に関係がある病態の例
①レニンとは?
レニンは腎臓の傍糸球体細胞で産生される分子量42,000の酵素である。
レニンの分泌はCl濃度,交感神経系により調節される。
血液中に分泌されたレニン
↓
↓肝由来のレニン基質(アンギオテンシノーゲ)により
↓
アンギオテンシンⅠを産生する。
↓
↓アンギオテンシン変換酵素により
↓
アンギオテンシンⅡを産生する。
※アンギオテンシンⅡは、アルドステロン分泌を促進し、血圧や体液の調節に関わっている。
※レニンの血中半減期は40~120分である。
※レニン-アンギオテンシン系の律速酵素はレニンであり、
血漿レニン活性の亢進により「体内でNa貯留」と「末梢血管の収縮」をきたす。
②レニン活性 (PRA)の診断の意義
レニン活性を測定することで「高血圧」や「電解質異常の診断」に役立つ。
また、レニン活性を見ることで「高血圧症の薬を選択する」上での助けにもなる。
※高PRA血症は、心筋梗塞の危険因子であることも分かっている
※PRA:plasma renin activity
基準値
臥位 0.3~2.9(ng/mL/hr)
立位 0.3~5.4 (ng/mL/hr)
PRAが減少する疾患
ネラルコルチコイド分泌性副腎皮質腫瘍
原発性アルドステロン症
特発性アルドステロン症
PRAが上昇する疾患
アジソン病
ネフローゼ症候群
バーダー症候群
レニン分泌性腎腫瘍
悪性高血圧
経口避妊薬投与による高血圧症
腎血管性高血圧
両側副腎摘出者
おまけ: レニン活性 に関係がある病態の例
原発性アルドステロン症
原発性アルドステロン症(primary aldosteronism:PA)
続発性高血圧症の中では頻度が高い部類である
高血圧患者の数パーセントいると言われている。(5%くらい?)
原発性アルドステロン症のスクリーニングでレニン活性が使われるので紹介する。
ガイドラインでは、血中のアルドステロンをレニン活性で割った
アルドステロン/レニン比を診断のスクリーニングに使われる
アルドステロン/レニン比が200超えるとスクリーニングで陽性となる。
今回は詳しく触れないがスクリーニングで陽性となると
カプトプリル試験、立位・フロセミド不可試験などを行っていくことになる。
腎血管性高血圧
腎動脈が狭窄して起こる病気。
レニン-アンジオテンシン系は、血圧が下がったり、ナトリウムが不足すると活性化するが・・・
腎動脈が狭窄すると腎臓の血流が少なくなって
腎臓が「血圧不足」や「ナトリウム不足」と勘違いしてしまう。
その結果・・・
レニンがたくさん産生されてしまい、血圧が上昇する。
(レニン活性が上昇する)
※ざっくり説明するとこうだが、腎血管性高血圧が必ず腎動脈狭窄症というわけではない
降圧薬のアンジオテンシン受容体拮抗薬やアンジオテンシン変換酵素阻害薬はRAA系を抑制する薬剤であり腎血管性高血圧の治療薬として用いられる。
ただし、両側性の腎動脈狭窄などこれらの薬剤を使用できない場合もある
※現在は、腎動脈へのバルーンやステントより内服の方がよいという方向もあり治療に関しては医師と患者の話し合った上で選択していくことが大切
参考文献
猿田 享男:日本臨床 53-増-679~682 1995
日本高血圧学会高血圧治療ガイドライン作成委員会編:高血圧治療ガイドライン2014.ライフサイエンス出版,東京,2014, 120―123