エドルミズ錠 (アナモレリン)の特徴について簡単に整理する。
実はあまり売れていない薬剤らしい。ただ、いきなり処方が出て対応となると良く分からない部分があったりする。
そのため、さらっとポイントだけまとめておく。
※臨床データがしっかりあって承認された訳ではないため今後の追加情報なども追いかけたい薬剤である。
エドルミズ錠 (アナモレリン)の特徴
がん悪液質による食欲不振と体重減少の改善を目的をする薬で非常に珍しい!
効能・効果
「下記の悪性腫瘍におけるがん悪液質」
「非小細胞肺癌、胃癌、膵癌、大腸癌」
※実は、売れていない理由の一つとなっている・・・適応の悪性腫瘍が限られるので注意すること(4つ)
肺癌と消化器系の癌にしか適応がないのだ。
効能又は効果に関連する注意(一部参照)
「切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌、胃癌、膵癌、大腸癌のがん悪液質患者に使用すること。」
「栄養療法等で効果不十分ながん悪液質の患者に使用すること。」
「6 ヵ月以内に 5%以上の体重減少と食欲不振があり、かつ以下の①~③のうち 2 つ以上を認める患者に使用すること。」
①疲労又は倦怠感
②全身の筋力低下
③CRP 値 0.5mg/dL 超、ヘモグロビン値 12g/dL 未満又はアルブミン値 3.2g/dL 未満のいずれか 1 つ以上
「食事の経口摂取が困難又は食事の消化吸収不良の患者には使用しないこと。」
※体重の減少とCRP、Hb、アルブミン値等が重要となってくる薬剤である。
用法・用量
「通常、成人にはアナモレリン塩酸塩として100mgを1日1回、空腹時に経口投与する。」
※1錠が50mgとなっているため、注意すること1回に2錠飲む薬剤である。もしも50mgで処方されていた場合、疑義照会はすること。
※エドルミズ錠100mgを1錠にすると大きくなって飲みにくいので50mgで2錠となっている
※食事の影響があるため空腹時に飲む必要がある。エドルミズ錠服用後1時間は食事をしないようにすること。食事の後に服用すると吸収が落ちてしまう。
【参考】
「食事終了後2時間に投与したときのアナモレリンの Cmax及びAUC0-∞は、空腹時と比較してそれぞれ0.31及び0.49倍に低下し、食事の影響が認められた。」
※「空腹時」となっているため「起床時」などに服用して食事まで1時間空ける必要があるので注意。寝る前は胃に食べた物が残っている可能性が高いので適さない。
用法及び用量に関連する注意(一部引用)
「本剤投与により体重増加又は食欲改善が認められない場合、投与開始 3 週後を目途に原則中止すること。」
「12 週間を超える本剤の投与経験はなく、体重、問診により食欲を確認する等、定期的に投与継続の必要性を検討すること。」
※12週越えた場合は、疑義照会を忘れずに行う事
薬理作用・作用機序
グレリン様作用薬という位置づけである。大きな2つの作用がある。
①脳の食欲中枢に作用⇒食欲を増進する
②脳下垂体に作用⇒成長ホルモンの分泌を高めることで筋肉を作り体重を増加させる。
【詳細】
アナモレリン(エドルミズ)は、グレリン受容体である GHS-R1a(成長ホルモン放出促進因子受容体タイプ1a)を作動させて作用を発現する薬剤である。GHS-R1aは多くの組織に分布し、「脳下垂体」では成長ホルモン(GH)の放出、「視床下部」では食欲の亢進に関与している。
脳下垂体から分泌された成長ホルモンは、肝臓からインスリン様成長因子-1(IGF-1)を分泌させ、IGF-1 は筋肉の蛋白合成を促進する
アナモレリンは、GHS-R1a を介して 成長ホルモンの分泌を促進するとともに食欲を亢進することで、筋肉量及び体重増加作用を示すと考えれている。
※ただし、この筋肉量に関してはネガティブな捉え方をすると、臨床試験のデータが除脂肪体重(LBM)となっている。純粋に筋肉量だけではないので注意が必要である。体重増加も見ながら総合的に判断する必要がある。
【補足:グレリンとは?】
体の中で食欲と体作りに関わっているホルモンである。
▶空腹になると、主に胃から分泌されて脳に作用し、食欲を高める。
▶成長ホルモンの分泌を促し、筋肉を始めとする体の様々な組織や器官が作られるようになる。
何の目的で飲む薬剤なのか
「がん悪液質による食欲不振と体重減少の改善を目的をする薬」
※がん悪液質は、体重減少と食欲不振を伴うがんの合併症
がん悪液質は「通常の栄養サポートでは完全に回復することができず,進行性の機能障害に至る骨格筋量の持続的な減少
(脂肪量減少の有無を問わない)を特徴とする多因子性の症候群」とされている
禁忌
「本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者」
「 うっ血性心不全のある患者[心機能を抑制し、症状が悪化するおそれがある。]
「 心筋伷塞又は狭心症のある患者[心機能を抑制し、症状が悪化するおそれがある。]
「 高度の刺激伝導系障害(完全房室ブロック等)のある患者[本剤はナトリウムチャネル阻害作用を有するため、刺激
伝導系に対し抑制的に作用し、悪化させるおそれがある。]
「 次の薬剤を投与中の患者:クラリスロマイシン、イトラコナゾール、ボリコナゾール、リトナビル含有製剤、コビシスタット含有製剤、エンシトレルビル フマル酸」
「中等度以上の肝機能障害(Child-Pugh 分類 B 及び C)のある患者[本剤の体内からの消失には主に肝臓が寄与しているため、血中濃度が上昇し、刺激伝導系抑制があらわれるおそれがある。」
「 消化管閉塞等、消化管の器質的異常による食事の経口摂取が困難な患者」
※特に良く使われる「クラリスロマイシン」は一緒に飲まないので注意すること
副作用
▶禁忌にも関わることであるが、エドルミズは「Naチャネル阻害作用」がある。
心臓への影響(刺激伝導系の抑制)は、特に投与初期に注意する必要がある。
「頻脈」「徐脈」「動悸」「血圧低下」「心電図異常」など
▶グレリン様作用が関係しているがインスリンの分泌が減るため血糖値が悪化しやすい
「血糖値が上がる」「口渇」「トイレの回数が増える」など
▶肝機能障害
「肝機能の検査値の悪化」「だるさ」「倦怠感」「黄疸」「発熱」などy
薬剤師として関われる部分
▶体重の推移
▶食欲がどうなったか(FAACTを使用:別記事予定)
▶血圧、脈拍の確認(パルスオキシメーターや血圧計を使用)
▶血液検査(血糖値、肝機能)の確認
その他の特徴
▶一包化、可能、○
▶粉砕、不可、✕
参考文献
エドルミズ錠、添付文書、インタビューフォーム
Fearon K, et al. Lancet Oncol. 2011; 12(5): 489-495.