薬物乱用頭痛 (MOH)の話について触れる。
MOH: medication - overuse headache
参考資料
片頭痛予防薬 について~ざっくりとした全体の話~
薬物乱用頭痛
片頭痛や緊張型頭痛などを持っている人に認められやすい
不思議なことに慢性疾患である関節リウマチなどで鎮痛剤を使用している人で問題となることは少ない
片頭痛薬の使用が原因で痛みに対する感受性が高まることが知られている。
その結果、薬剤使用により頭痛が起こると言われている。
発生頻度は不明である
有病率
・外国での有病率は1~2%程度
・男性より女性が多く、7割を占める。
・欧米諸国の頭痛外来でも多く問題となっている。
診断基準
トリプタン乱用頭痛は、薬物乱用頭痛の診断基準が基本となっているので両方押えておく必要がある。
【薬物乱用頭痛の診断基準】
A:頭痛疾患の既往をもつ患者において1か月に15日以上発生する頭痛
B:急性期治療または対症療法として3か月を超えて1種類以上の頭痛治療薬を定期的に多用している
C:ほかにICHD-3(国際頭痛分類第3版)における最適な診断がない
以上のABCを満たすものを「薬物乱用頭痛」とする。
【トリプタン乱用頭痛】
A:「薬剤の使用過多による頭痛(MOH)の診断基準を満たす頭痛」
B: 3か月を超えて、1か月に10日以上、1種類以上のトリプタンを定期的に摂取している
(剤形を問わない)
※1か月に10日以上というのがポイントである。保険的にも1か月にトリプタン系は10錠まででないと切られるケースが多い
誘発されやすいケース
・鎮痛薬やトリプタン系薬剤の予防的使用
※不安などから定期的に服用する場合がある
※最も多いケース
・頭痛の頻度や別の頭痛が起こるため単純に発作時の使用回数が多い
対策
・原因薬剤の中止
・薬剤中止後の反跳性の頭痛対策
→トリプタン系を中止する場合は、NSAIDsで対処する
それでもダメな場合は、ステロイドの使用を検討する
※反跳性頭痛は、薬剤中止後2日から10日程度続くことが多い
・頭痛予防薬を考慮する
※予防の目標としてトリプタン系薬剤の使用は1か月10回以下にすること
参考:トリプタン系薬剤の添付文書改訂令和元年6月4日
改めてDSUでも注意喚起されており、添付文書が改訂されている。
【医薬品名】
・エレトリプタン臭化水素酸塩
・ゾルミトリプタン
・ナラトリプタン塩酸塩
・リザトリプタン安息香酸塩
【重要な基本的注意】
「本剤を含むトリプタン系薬剤により、頭痛が悪化することがあるので、頭痛の改善を認めない場合には、「薬剤の使用過多による頭痛」の可能性を考慮し、投与を中止するなど、適切な処置を行うこと。」
【重大な副作用】
「薬剤の使用過多による頭痛:薬剤の使用過多による頭痛があらわれることがあるので、異常が認められた場合には投与を中止するなど、適切な処置を行うこと。」
参考資料
日本神経学会・日本頭痛学会:慢性頭痛の診療ガイドライン2013 P264-270
International Headache Society:Cephalalgia 2018;38(1):1-211
2019年06月04日薬生安発0604第1号 別紙1