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呼吸器疾患

メプチンとサルタノールの特徴・使い分け~SABA~

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今回は、喘息発作に用いる短時間型β2刺激薬(SABA)であるプロカテロール(メプチン®)とサルブタモール(サルタノール®、ベネトリン®)の特徴、使い分けを概説する。べロテック®を使えるケースは限られるため今回は除外した。

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プロカテロールとサルブタモールの特徴・使い分け

▶発作時にスペーサーを使いたい場合⇒無料のためメプチンエアー®
▶メプチン®を使用すると副作用が生じる場合⇒サルタノールインヘラー®
▶アルコールに過敏な人⇒サルタノール®インヘラー
▶サルタノールインヘラー®の方がβ2受容体への選択性が高く、心毒性は弱い

剤形・商品名

▶プロカテロールは、DPI、pMDI、ネブライザーの全てが発売されている。
・DPI:メプチンスイングヘラー®
・pMDI:メプチンエアー®、メプチンキッドエアー®
・ネブライザー:メプチン®吸入液ユニット

▶サルブタモールは、pMDIとネブライザーが発売されている。DPIはなし。
・pMDI:サルタノールインヘラー®
・ネブライザー:ベネトリン®吸入液

※DPI:ドライパウダー吸入製剤
※pMDI:加圧噴霧式定量吸入製剤

サルブタモールのDPIは販売されていない。ただし、実際問題として・・・DPIであるメプチンスイングヘラー®を使う際は、吸入したあとに数秒息を止める必要があるため、発作時には不向きな製剤である。おそらく、あまりサルブタモールにDPIがないことは問題とならない

スペーサーの有無

▶プロカテロール(メプチン®エアー、メプチン®キッドエアー

メプチン®エアー、メプチン®キッドエアーには、販売メーカーが用意している「無料」のスペーサーが2種類ある。「プラスチックで出来たポケットスペーサー」と「段ボール様の素材で出来た吸入スペーダー」である。ポケットスペーサーの方は、すぐに使える仕様であり、吸入スペーダーの方は、組み立てる必要があるので発作時には使いにくい。個人的には、プラスチックで出来たポケットスペーサーをおススメしたい。

▶サルブタモール(サルタノールインヘラー®)

サルタノールインヘラー®に販売メーカーが用意しているスペーサーはない。有料のエアロチャンバー®プラスなどを使用することは可能である。
※SABAで販売メーカーが専用スペーサーを用意しているのは、メプチン®だけ

発作時に上手く吸入することが出来ず、スペーサーを用意する場合は、副作用などの問題がなければメプチン®の方が患者自身のコスト面で良い。個人的な意見になるが、スペーサーを渡す場合、組み立てなどの面倒臭さがないプラスチックのポケットスペーサーの方が患者としては楽である。

効果時間

▶プロカテロール(メプチンエアー®、メプチンキッドエアー®)

効果発現時間は、投与後5分以内
作用時間は約6時間

▶サルブタモール(サルタノールインヘラー®)

効果発現時間は、投与後5分以内
作用時間は、4~6時間と比較的短い

効果発現時間や作用時間に大きな差はないが、サルタノールインヘラーの方が効果時間としては短い

添加剤の違い

▶プロカテロール(メプチンエアー®、メプチンキッドエアー®)
メプチン®には、添加剤として「無水アルコール」を含むため、アルコールが合わない人は余計に息苦しくなることがある。

▶サルブタモール(サルタノールインヘラー®)
サルタノールインヘラー®は、「無水アルコール」を含まないため、アルコールに敏感な人にも使いやすい。

β2受容体への選択性と心毒性

サルブタモール(サルタノール®)の方がプロカテロール(メプチン®)よりβ2受容体への選択性が高い。そのため、心毒性もサルブタモールの方が弱く、「動悸」や「振戦」などの副作用も少ない。直接的な比較試験の論文は少ないが、1992年のMazzaらの安全性の比較に関する報告によると、副作用である「振戦」の発現はプロカテロールで6.4%、サルブタモールで2.5%である。

メプチン®エアーで「動悸」や「振戦」が生じて使いづらい人にサルタノール®を試してみると上手くいくことがあるので試してみて欲しい。経験上、男性より女性の方がメプチン®を合わないと感じる人が多い印象である。

両者の使い分け

前提として発作時に使いやすいのは、「pMDI」や「吸入液ユニット」が使いやすい。患者個人はネブライザーを所持していないケースが多い。そのため、吸入液ユニットは高齢者施設や医療機関で使用されるケースが多い。また、個人で発作に対応する場合は、「pMDI+スペーサー」が良いと思われる。私見が入るが両者の使い分けを整理する。

▶プロカテロール(メプチン®)
スペーサーを使用したい場合は、メプチン®の方が経済的である
副作用に問題がなければ効果時間はメプチン®の方が長い

▶サルブタモール(サルタノール®)
メプチン®で「動悸」や「振戦」が生じる場合はサルタノール®を試す
アルコールに敏感な人には、サルタノール®の方が良い