自分も学生の時には、坐薬が錠剤より速く効くというイメージを持っていたが、例外がたくさんあることを知ったので簡単にまとめる。
そもそも正しい面もある。錠剤は、口から飲み込んで消化管で吸収されて・・・
という過程を経るが、坐剤は、直接全身循環に入るからである。
ただ基剤による違いが色々あるので注意する必要がある。
①基剤による違い: 脂溶性基剤VS水溶性基剤
脂溶性基剤
冷所保存の坐剤の基剤は脂溶性のものが多い。
お尻から入れた際に体温の熱で溶けるように出来ている
→速く溶けるために効果も速い
例:ジクロフェナク坐剤(ボルタレン®坐剤)である。
水溶性基剤
基本的には室温保存のものは、水溶性基剤のものが多い。
なぜ?室温保存できるかというと
脂溶性基剤よりも融点が高いためである。
だいたい融点は、50~60℃くらいですごく高い。
これでは溶けないのでは?
実は体液で溶けるように出来ている。
直腸には2mlから4mlくらいの体液が入っている
(pH7.2からpH7.4)
→体液でゆっくり溶けるため基剤が溶けるのに時間がかかる。
例:ドンペリドン坐剤(ナウゼリン®坐剤)
レペタン®坐剤、ボラザG®坐剤、リンデロン®VG坐剤
基本的には、室温保存のものは水溶性基剤と覚えること
②例外について
脂溶性基剤だが室温保存の例
アンペック®坐剤、テレミンソフト®は、ハードファットという油脂性基剤(融点が高い)でも室温保存である。
アンペック®坐剤はTmax:1.5hr程度。
テレミンソフト®は、インタビューフォームに15~60分に効果が発現すると書かれているのでかなり速い。
油脂性基剤だが錠剤の方が効果が早い例
アセトアミノフェンがその1つの例である。
アセトアミノフェン坐剤(カロナール®坐剤)は、脂溶性基剤であるが・・・
効果発現は錠剤の方が速い。
錠剤と細粒は同じくらいのスピードである。
経口投与が可能であれば、坐薬を使うメリットはあまりない。
錠剤が飲めないのであれば細粒かシロップを用いる。
病院であれば注射を使えばよい・・・
坐薬は錠剤が飲めない幼児くらいだろうか・・・
(個人的には、シロップでよい気がする)
③副作用はどうなの?
ジクロフェナク(ボルタレン®)坐剤の例で見てみる。
そもそも胃腸を通過しないので坐薬の方が胃腸障害(潰瘍)が少ないのか?
という話なのだが・・・
市販後調査で坐薬の方が消化管障害が少ない。
坐薬:0.8%
錠剤:6.63%
→坐薬の方がいいかな?と考えるが・・
リウマチ学会の論文によると、
胃潰瘍に関しては有意差がない
どっちが正しいか難しいところであり、
法的根拠は添付文書なのでその数字は抑えることは大切である。
リウマチの論文の例は下記参照
参考資料
ボルタレン®坐剤、錠剤添付文書、インタビューフォーム、市販後調査
ナウゼリン®坐剤、錠剤添付文書、インタビューフォーム
カロナール®坐剤、錠剤添付文書、インタビューフォーム
アンペック®坐剤、テレミンソフト、インタビューフォーム
塩川優一・他:リウマチ,31,96-111,1991