メトホルミンと腎機能 について簡単にまとめる。
添付文書を確認してeGFRで評価してみよう。
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メトホルミン (メトグルコ®)の薬理作用について
メトホルミンとピオグリタゾンの違い ・比較
①メトホルミンと腎機能
メトホルミンは、
日頃からeGFRを確認しておく必要がある薬剤である。
そもそもなぜ腎機能障害患者で投与制限があるのか?
メトホルミンは未変化体のまま腎臓から排泄される。
そのため、腎機能が低下すると
メトホルミンの排泄が遅延し、血中濃度が上昇する。
→乳酸アシドーシスのリスクが高まるため投与制限が必要である
2019年6月に明確にeGFR値ごとの投与量が示された
令和元年度第三回薬事・食品衛生審議会薬事文科会医薬品等安全対策部会安全対策調査会の結果より、添付文書の改訂がされることとなった。
メトグルコ®の添付文書参照
・禁忌
「重度の腎機能障害(eGFR 30mL/min/1.73m2未満)のある患者又は透析患者(腹膜透析を含む)〔腎臓における本剤の排泄が減少し、本剤の血中濃度が上昇する。〕 」
↓
メトホルミンは多くの糖尿病患者に投与されているため注意が必要
採血結果から腎機能を常にフォローする必要があると思う
・用法・用量に関連する使用上の注意
「中等度の腎機能障害のある患者(eGFR 30mL/min/1.73m2以上 60mL/min/1.73m2未満)では、メトホルミンの血中濃度が上昇 し、乳酸アシドーシスの発現リスクが高くなる可能性があるため、以下の点に注意すること。特に、eGFRが30mL/min/1.73m2 以上45mL/min/1.73m2未満の患者には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること。
・投与は、少量より開始すること。
・ 投与中は、より頻回に腎機能(eGFR等)を確認するなど慎重に経過を観察し、
投与の適否及び投与量の調節を検討するこ と。 」
効果不十分な場合は、メトホルミン塩酸塩として1日最高投与 量を下表の目安まで増量することができるが、効果を観察しながら徐々に増量すること。また、投与にあたっては、1日量 を1日2~3回分割投与すること。 中等度の腎機能障害のある患者における1 日最高投与量の目安 推算糸球体濾過量(eGFR) (mL/min/1.73m2)
1日最高投与量の目安
45 ≦ eGFR < 60 →1,500mg
30 ≦ eGFR < 45 →750mg
※米国の場合
eGFR<30 禁忌
30<eGFR<45 投与開始を推奨しない
※脱水に注意が必要
・利尿剤やSGLT2阻害剤併用時
・発熱、下痢、嘔吐、食事摂取不良等の体調不良時など
※過度のアルコール摂取は避けること
アルコールを避ける理由
アルコール摂取で肝臓での乳酸代謝を阻害する。
乳酸からの糖新生を邪魔してしまうのだ。
その結果、肝臓に乳酸が溜まりやすくなる。
②乳酸アシドーシスとは?
血液に乳酸が溜まって酸性に傾いている状態
糖尿病だけでなく、出血性や敗血症などのショックでも起こりうる。
症状
胃腸障害(悪心、嘔吐)、倦怠感、筋肉痛、筋力低下、 過呼吸(息苦しさ)
進行すると昏睡状態となる
③合剤はどうなるのか
合剤としてエクメット®、イニシンク®、メトアナ®などがある。
特にエクメット®とイニシンク®は腎機能障害のある方は単剤使用が勧められている。
エクメット®
「中等度の腎機能障害のある患者(eGFR30mL/min/1.73m2 以上60mL/min/1.73m2未満)では、ビルダグリプチン及 びメトホルミン塩酸塩を腎機能に応じて減量するなど慎重な投与が必要であるため、本剤を使用せず、各単剤の併用 を検討すること。」
イニシンク®
「中等度の腎機能障害のある患者(eGFR30mL/min/1.73m2以上 60mL/min/1.73m2未満)では、アログリプチン安息香酸塩及 びメトホルミン塩酸塩を腎機能の程度に応じて減量するな ど慎重な投与が必要であるため、本剤を使用せず、各単剤の併用を検討すること。」
参考:
各薬剤添付文書、インタビューフォーム
令和元年度第三回薬事・食品衛生審議会薬事文科会医薬品等安全対策部会安全対策調査会2019.6