Tender loving care(TLC): 愛護的ケア・やさしさに包まれるようなケア
不育症と低用量アスピリンについてはこちらを参照
①不育症の原因
不育症の原因は様々である。
以前の記事でも書いたが再度登場
子宮形態異常(7.1%)
甲状腺異常(6.6%)
染色体異常(4.8%)
抗リン脂質、抗体異常(9.3%)
凝固第Ⅻ因子欠乏(6.9%)
プロテインC欠乏(0.3%)
プロテインS欠乏(7.9%)
PE抗体陽性(23.5%)
原因不明(64.2%)
PE:フォスファチジルエタノラミン
原因不明に対する治療法は・・・?
原因不明なことも多く、原因不明な場合適切な治療法というものが分かっていない
→「抗血栓療法」、「プロゲステロン療法」、「免疫療法」など有効というものはない。
そんな中、精神的な影響も大きいことが分かっている。
原因不明の中に「うつ」「不安」があり、
反復的な流産につながっている現状がある
流産とメンタル面
流産後早期には20~40%の女性が不安の症状を示すと言われている。
・流産後6 カ月間の強迫性障害(Obsessive-Compulsive Disorder: OCD)
など不安障害の発症
→15.7%
※一般女性の1.5倍
・流産後早期に抑うつ症状
→28%
※一般女性の4.0倍
・流産後6 カ月間の大うつ病の発症
→10.9%
※一般女性の2.5 倍
夫婦の仲が悪い場合、上記の精神的な病気の発症率が高いとの報告もある。
②Tender loving care(TLC)とは?
Tender loving care(TLC): 愛護的ケア・やさしさに包まれるようなケア
がとても効果的なことが分かっている。
・流産率を低下させる。
・精神状態を和らげることで次のステップにもつながる。
・現在の妊娠が不成功になっても次につなげるために大切である。
どんなことをするのか?
妊婦に対する1~2週間隔の検診や超音波検査
カウンセリング(前向きなコメント、妊娠初期の出血は慌てないこと)
妊娠初期の重労働、旅行、性行為は避ける
など
データとしては?
TLCのあり、なしで流産回避率/生児獲得率がかなり変わってくる報告が多い。
日本での調査では
TLC(厚労省研究2011)
無の場合:56.9%
有の場合:79.4%
海外の報告でも・・・
TLC(Liddell HS, et al., 1991)
無の場合:33%
有の場合:86%
かなり改善することが報告されているのでメンタル面のサポート・ケアは
とても大切である
参考資料
Kaandorp SP, et al., NEJM. 2010
Clark P, et al., Blood, 2010
Haas DM, Ramsey PS., Cochrane Database Syst Rev. 2008
Porter TF, et al., Cochrane Database Syst Rev. 2008
厚生労働研究班データ 2011
Stray-Pedersen et al. AJOG 148 : 14 0-146 , 1984
Geller PA, Klier CM, Neugebauer R. Anxiety disorders following miscarriage. J Clin Psychiatry 2001 ; 62 : 432-438.
Neugebauer R, Kline J, Shrout P, Skodol A, O'Connor P, Geller PA, Stein Z, Susser M. Major depressive disorder in the 6 months after miscarriage. JAMA. 1997 ; 277(5): 383-388.
Lok IH, Neugebauer R. Psychological morbidity following miscarriage. Best Pract Res Clin Obstet Gynaecol 2007 ; 21 : 229-247.