低亜鉛血症とガイドライン について触れる.
別の記事で述べているが、
特定の疾患で体内の亜鉛が不足することが分かっている
その中で、ガイドライン上に記載されているものについて整理する。
「肝硬変診療ガイドライン」
「褥瘡予防・管理ガ イドライン」
「亜鉛欠乏症の診療指針」
などに記されている。
低亜鉛血症の診断基準や治療はこちらを参照
ノベルジン®の特徴についてはこちらを参照
①肝硬変診療ガイドライン2015(改訂第二版)
「肝硬変」における血糖改善に亜鉛補充療法が有効であるという報告がある。
亜鉛欠乏症を併発する肝性脳症への亜鉛補充療法も示されている
※亜鉛という微量元素が様々な生理機能などに関わっていることが分かる
亜鉛欠乏症を併発する肝性脳症への亜鉛補充療法
・エビデンスレベルB:中程度の質のエビデンス
・推奨の強さなし
「効果の推定値がある程度信頼できる」
上から2番目のエビデンスである。
・ガイドライン上は長期間使用の目的のでエビデンスは乏しく
「6か月程度」を目安と記載されている。
「血漿アンモニア値」、「肝性脳症の程度」、
さらに「child-pughスコアの改善」などの報告がある。
また、亜鉛補充療法での副作用がほとんどないことから問題はないとしている
※安全性が高いというのは重要である
②褥瘡予防・管理ガ イドライン
そのまま引用すると、下記のように記載されている
「褥瘡発生リスクの高い大腿部頸部骨折骨折患者に栄養補給した群で、血清総蛋白、アルブミンが有意に高値であり、蛋白質、アルギニン、亜鉛、抗酸化成分が強化された補助食品を補充した場合は、プラセボ群に比べてステージⅡの発症率が低く、発症までの期間が長かった」
※ステージとは?
褥瘡は深さによって分類することがある。
ステージⅠからⅣまである。分類に関しては別の記事で詳しくまとめる。
めちゃくちゃざっくり言うと・・・
ステージⅠ:消退しない発赤
ステージⅡ:真皮の部分層の欠損
褥瘡患者に特定の栄養素を補給することは有効か?
・推奨度C1:根拠は限られるが行ってもよい
・推奨文:
「亜鉛、アスコルビン酸、アルギニン、L-カルノシン、n-3系脂肪酸、コラーゲン加水分解物など疾患を考慮したうえで補給しても良い」
※亜鉛に関してもまだエビデンスが乏しいためC1となっている
③亜鉛欠乏症の診療指針
他の記事でも引用したが、下記のような用量などが設定されている。
亜鉛として
成人50~100mg/日
小児1~3mg/kg/日または
体重20kg未満で25mg/日
体重20kg以上で50mg/日
上記を1日2回で食後に経口投与する。
症状や血清亜鉛値を参考に投与量を増減する。
さらに、下記のように記載されている
「慢性肝疾患,糖尿病,慢性炎症性腸疾患,腎不全では,しばしば血清亜鉛値が低値である.血清亜鉛値が低い場合,亜鉛投与により基礎疾患の所見・症状が改善することがある.したがって,これら疾患では,亜鉛欠乏症状が認められなくても,亜鉛補充を考慮してもよい」
↓
基礎疾患があれば診療指針的には、補充療法を行った方がいいと記載されている。胃腸障害などの副作用があるが・・・
安全性が高いという所もポイントである。
とりあえず服用しても害が少ない。
おまけ:日本人の食事摂取基準
どれぐらい食事などから摂るべきかも知っておくとよい。
亜鉛摂取推奨量:
・成人男性で10mg/日
・女性 で8mg/日
※妊婦、授乳婦ではそれぞれ 2mg/日、3mg/日が付加量として示されている
参考資料
肝硬変診療ガイドライン2015、改訂第二版
褥瘡予防・管理ガ イドライン2015、第4版
亜鉛欠乏症の診療指針 2018、一般社団法人 日本臨床栄養学会
食事摂取基準、厚生労働省