①慢性腎臓病(CKD)と代謝性アシドーシス
アシドーシスとは体の中が酸性の状態を差している。
血液が酸性に傾くと腎臓の機能低下が進行することが分かっている。
さらに、自覚症状として「食欲不振」「倦怠感」「呼吸困難」などが起こることもあるので注意が必要である。
補足:代謝性アシドーシスとは?
代謝性アシドーシスは、アニオンギャップ(AG) 開大性代謝性アシドーシスと、AG正常性代謝性アシドーシス(高 Cl 性代謝性アシドーシス)とに分けることが出来る。
今回注目するのは、AG正常性代謝性アシドーシス(高 Cl 性代謝性アシドーシス)である。
かなりざっくりした説明なので間違いがあればメールなどくださると助かります
アニオンギャップ(AG) 開大性代謝性アシドーシス
乳酸アシドーシスとケトアシドーシスの事が多いと言われている。
原因は様々である。
・乳酸アシドーシス(ビタミンB1欠乏)
・ケトアシドーシス(糖尿病、アルコール、飢餓)
・腎不全
・薬物中毒(メタノール、シアン化合物など)
AG正常性代謝性アシドーシス(高 Cl 性代謝性アシドーシス)
血液検査でNa-Cl < 36 mEq/L であれば高 Cl 性代謝性アシドーシスの可能性がある。
※例えば、Na(141)、Cl(120)であれば、差は21
原因はかなり多いが、医師は、まず下痢と尿酸性化障害(尿細管性アシド-シス、腎不全初期)などを疑う。
この尿酸性化障害に対して「重曹」を用いる。
※他の原因
・過栄養
・アセタゾラミド
・アジソン病
・NaClの大量補液
②服用する量
重曹の量として1.5g~3gを服用する
※薬局としては高ClのClが下がっていることを検査値として確認することも大切
※Naの蓄積による体液貯留・浮腫などに注意する
※ただし、Clと共役していないNaの場合は体液貯留の可能性は低いと言われている
③重曹・炭酸水素ナトリウム(NaHCO3)を用いる理由
『エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2013』において,重炭酸Na投与による代謝性アシドーシスの補正が推奨されるようになった。
アンモニアを中和する!?(ラットでの報告)
アシドーシスになると、
ネフロンあたりの尿細管でのアンモニアを産生が増大する
↓
アンモニアは補体を活性化する
↓
尿細管障害を引き起こす
↓
重曹(炭酸水素ナトリウム)を服用することで酸性に傾いた血液を中和
↓
アンモニアの産生を減らす
↓
尿細管障害を遅らせる1)
栄養状態が改善する
腎保護作用+栄養状態改善2)
透析導入を遅らせる
CKDにおいては,酸排泄能が低下する
↓
代謝性アシドーシス
↓
アルカリ投与で補正することで腎機能低下を抑制できるとする
↓
末期CKDの代謝性アシドーシスに対して重炭酸ナトリウム(Na)投与で透析導入が抑制される2)
eGFRの低下を抑える
腎硬化症の早期CKD患者において,
重炭酸Na投与によりeGFRの低下が抑制された3)
参考資料
エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2013
1)Nath KA ,et al:Pathophysiology of chronic tubulo-interstitial disease in rats. Interactions of dietary acid load, ammonia and complement componet C3. J Clin Invest 76: 667-675,1985.
2)de Brito-Ashurst I,et al: Bicarbonate supplementation slows progression of CKD and improves nutritional status. J Am Soc Nephrol 20(9) : 2075-2084,2009.
3)Mahajan A, et al:Kidney Int. 2010;78(3):303-9.