妊娠中の蜂蜜 (はちみつ・ハチミツ)について簡単に整理する。質問が割と多い項目である。ボツリヌス菌と乳児ボツリヌス症もざっくりと触れる。
①妊娠中の蜂蜜 について
妊婦が蜂蜜を食べてもボツリヌス菌が胎盤を通過することはないので大丈夫。
胎児に影響ない。
授乳中も母親が蜂蜜を食べる分には問題ない
②ボツリヌス菌とは?
ボツリヌス菌(Clostridium botulinum等)は、
海、山、川の泥砂や土壌に存在している。
偏性嫌気性桿菌で熱に強い。
低酸素状態で発芽、増殖して毒素を放出する。
菌と毒素で対策温度が異なる。
ボツリヌス菌:
120℃、4分間(または、100℃、6時間)以上の加熱で死滅
ボツリヌス毒素:易熱性
80℃30分間(または、100℃なら数分)以上の加熱
中心温度85℃、30分室温放置で失活
※ボツリヌス菌の分類はⅠ~Ⅳに分類されている
※潜伏期間:一般に8~36時間程度
早い場合、 5~6 時間、
遅い場合、2~3 日間。
補足:偏性嫌気性桿菌
酸素があると増殖できない細長い形の細菌。
偏性嫌気性菌または、嫌気性菌と呼ぶ。
通常のボツリヌス菌による食中毒は?
食品中でボツリヌス菌が増殖し、産生された毒素を経口的に摂取することによって発症する毒素型食中毒である。
③乳児ボツリヌス症:Infant botulism
生後1歳未満の乳児では、腸内環境が成人とは異なり、
腸管内でのボツリヌス菌の定着と増殖が起こりやすい。
そのため、芽胞を形成した菌を含む食品を摂取すると、腸管内で増殖して
毒素を産生してしまう。
※上記とは違い、消化管内で菌が増殖して毒素を産生する
※成人であれば、ボツリヌス菌が入ったハチミツを食べても通常は問題ない
ボツリヌス症を発症しない。
※1歳以上であれば離乳食などで腸内環境が整うので問題ない
症状
便秘傾向を示し、大半の場合、便秘症状が数日続く。
「全身の筋力低下」、「脱力状態」、「ほ乳力の低下」、「泣き声が小さくなる」
「無表情となる」「頭部を支えられなくなる」
など
ほとんど治療されるが、希に死亡する例がある。
※潜伏期間:3~30程度と推定されている
対策:可能性のある食品を避ける
一番よく言われているのは、「蜂蜜(ハチミツ)」
その他には、
自家製野菜スープ
野菜ジュース
井戸水
ベビーフード
コーンシロップ
缶詰
ハウスダストなど
※土壌にもボツリヌス菌が存在しているため
補足
ボツリヌス症は「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」で
第四類感染症に分類されており、
ハチミツが推定原因とされる乳児ボツリヌス症例は、
1989年までの12例に2017年の1例を加えて、13例
はちみつ以外は、1990年から2016年までに24例
蜂蜜の鎮咳作用についてはこちらを参照
参考資料
内閣府、食品安全委員会 ファクトシート H26年10月17日
武士甲一.3 ボツリヌス中毒:坂崎利一 編集,食水系感染症と細菌性食中毒,
p492-513,中 央法規出版㈱,2000
国立感染症研究所.感染症の話、乳児ボツリヌス症のお話.
IDWR 1999, vol. 1, no.34, p. 18-20.
平成29年度感染症危機管理研修会資料 2017/10/11