ゴムの劣化 と油脂性軟膏・基剤について簡単にまとめる。
かなりマニアックかもしれないが知っておくとよいと思う。
医薬品等安全性情報152号でも出されている内容である。
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ゴムの劣化 と油脂性軟膏・基剤
医薬品等安全性情報の記載
「油脂性成分を基剤とする膣坐剤等の接触による避妊用ラテックスゴム製品の品質の劣化について」という内容で注意喚起がされている。
対象は、油脂性成分を基剤として使用している膣適用の医薬品、外陰部及びその周辺に適応を有する外用医薬品である。
この油脂性成分が、コンドーム等の避妊用ラテックスゴム製品の品質を劣化・破損する可能性があるので
接触を避けるよう「使用上の注意」の改訂がされている。
ゴムの劣化 の理由・機序
ラテックスゴムの特徴的な性質は、「強度があり」、「弾性が大きい」、「透過性が低い」というものである。この性質を利用して様々な用途として使われている。
ゴムの劣化の理由は少し難しいが簡単に下に整理する。
【ゴム劣化の理由】
ゴムと油脂性成分(例えば、白色ワセリン)との接触
↓
ラテックスの架橋構造の結合が切断
※ラテックスは、一定の親油性のポリマーで一定の方向性がある。
それが乱れることで起こってしまうらしい。
↓
ラテックスゴムが劣化してしまう
※コンドームは非常に薄く作ってあるため、少しの劣化で破れる等のトラブルが起こってしまう。
※海外の事例であるが、硝酸ミコナゾール腟坐剤で治療中の女性が性交渉を行ったことでコンドームが破損して妊娠したというものがある。恐ろしい・・・
適用上の注意の記載例
キンダベート軟膏の添付文書によると
「本剤の基剤として使用されている油脂性成分は、コンドーム等の避妊用ラテックスゴム製品の品質を劣化・破損する可能性があるため、これらとの接触を避けさせること」
※デリケートゾーンにも使用できる軟膏なので注意すべきである
※ちなみに、キンダベート軟膏の基剤は白色ワセリンである
記載がある医薬品の例
•アデスタンクリーム
•パラベールクリーム他、腟坐剤
•オキナゾールクリーム
•キンダベート軟膏
•トリコマイシン軟膏
•マイコスタチン軟膏
•ピマフシン軟膏
•フルコートF
•産婦人科用イソジンクリーム
•フロリードD
•フロリード
•ソルコセリル腟坐薬
•アラセナ-A軟膏
※個人的にこの注意喚起に初めて気づいたのは、キンダベート軟膏だった。意外とフルコートFやアラセナーA軟膏などは在庫している薬局も多いと思うので知っておくとよいのではないだろうか。
どれぐらい劣化するのか?
「6種類のコンドームを包装から取り出して広げ、硝酸ミコナゾールを含有する腟坐剤 を37℃にて、1時間接触させた後、腟坐剤を拭き取り、室温まで自然冷却した。コンド ーム(25個×6種類)は、ISO規格にしたがって検査し、薬剤非接触群(100個×6種類) と比較した。その結果、バースト圧・バースト容積ともに平均35%の低下がみられた」
※35%低下するというのは、結構劣化すると感じた。1時間と言う速さもポイントではないだろうか
参考資料
キンダベート軟膏、添付文書
グラクソスミスクライン問い合わせ
R. H. B. Meyboom., et al.:Beschadiging van condooms door vaginaal toegediende geneesmiddelen, Ned. Tijdschr. Geneeskd., 139(31):1602-1605(1995)
G. S. Bernstein., et al.:Contraception and infection, Journal of Obstetrics and Gynaecology, 14(Suppl. 2):S139-S141(1994)