腎障害とHb の関係について簡単に整理する。
少しまとまりがないが、色々な観点を載せてみることにする。
Hb:ヘモグロビン
①腎障害とHbについて
CKDとHbの関係
CKDではeGFRがいくつになるとHbが低下し始めるのだろうか?
eGFRが60 ml/min/1.73 m2未満になると(CKD G3a〜G5)腎性貧血を生じる頻度が有意に増加する。
1988年〜1994年にかけて米国で実施された、腎機能と貧血の相関を調べたもので、20歳以上の成人15,419人を対象とした各eGFR値におけるHb値を見た結果、eGFR<60でHbが低下し始めると報告されている。
そのため、
eGFR<60 ml/min/1.73 m2であるCKDのG3a~G5では定期的に貧血の有無と程度をチェックすることが推奨されている。
※補足としてeGFR自体、計算式の関係で年0.5ml/min/1.73 m2程度で低下するように作られている。
※他にもRENAALサブ解析によって末期腎不全患者は、時間と共にHbが低下していくことが報告されている
貧血とエリスロポエチンの関係
エリスロポエチンは、腎臓で作られるために、
非腎性貧血ではHbが低下するにつれてEPO値は増加する。
腎性貧血ではHbが低下してもそれに応じてEPO値は増加せず、正常〜やや低値となる。
少し難しい内容になるが、これが意味するところは、エリスロポエチン以外の要因があることを意味するらしい。
参考としてガイドラインは下記のようにも書かれている
2012年のKDIGOガイドラインには、
「CKD患者の貧血において、 EPO濃度はEPO欠乏による貧血とその他の原因による貧血を鑑別するために、ほとんどの場合ルーチンに用いられるものではない。一般的にEPO濃度の測定は推奨されない。」
腎臓が悪くなっているとエリスロポエチンも下がりそうだが不思議である。
分かっているCKDと貧血の関係を次に示す
CKDで貧血が生じる複数の機序
① 腎からのEPOの相対的産生低下
② 赤血球寿命の短縮
③ 骨髄における赤血球造血の抑制
④ ヘプシジン(hepcidin)の増加による鉄代謝障害
※ヘプシジンは25のアミノ酸からなるペプチドであり、鉄代謝を調節している。ヘプシジンは、尿毒症を含む様々な炎症が刺激となって肝臓から産生され、腸管からの鉄の吸収を抑制し、マクロファージからの鉄の遊離を抑制する。
⑤ 栄養障害
亜鉛、銅などの微量元素、ビタミンB12、葉酸などの欠乏
CKDで貧血があった場合に行う一般的な検査
• 血算(WBCとその分画、Hb、RBC、MCV、PLT)
• 網赤血球数
• フェリチン
• 血清鉄
• 総鉄結合能(TIBC)
• トランスフェリン飽和度:Transferrin Saturation (TSAT)
= 血清鉄/TIBC×100(%)
• ビタミンB12、葉酸
• 便潜血反応
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②エビデンスに基づくCKDガイドライン2018からの抜粋
第6章、腎性貧血 CQ1:
腎性貧血を伴うCKD患者での赤血球造血刺激因子製剤(ESA)治療における適切なHb目標値はどれくらいか?
「推奨:保存期における患者のESA治療における目標Hb値は11g/dL以上、13g/dL未満を提案する。ESAを投与する際は、ESA抵抗性の原因となる病態の検索および是正に努め、ESA投与量が過剰にならないように留意すべきである。ただし、重篤なCVDの既往や合併のある患者、あるいは医学的に必要のある患者では、Hb値12g/dLを超える場合にESAの減量・休薬を考慮する。」〈B2〉
第12章、高齢者CKD CQ6:
腎性貧血を有する75歳以上の高齢者CKD患者におけるHb値を11g/dL以上、13g/dL未満に管理することは推奨されるか?
「75歳以上の高齢CKD患者の腎性貧血に対して、ESAと鉄製剤を用い、Hb値を11g/dL以上、13g/dL未満に管理することを提案するが、死亡リスクの観点からはHb値が9g/dL以上の管理でも許容される。ESAを投与する際には、ESA抵抗性の原因となる病態の検索および是正に努め、ESA過剰投与とならないように留意すべきである。」〈C2〉
参考資料
Arch Intern Med 2002; 162: 1401-1408
Anemia and chronic renal failure, Medicine (2015)Article in Press
Kidney International Supplements (2012) 2
日本腎臓病学会 CKD診療ガイド 2012
Mohanram.A . et al .:Kidney Int 66 : 1131-1138,2004
エビデンスに基づくCKDガイドライン2018