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循環器

周術期と抗凝固薬 ~不整脈薬物治療ガイドラインより~

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周術期と抗凝固薬 について簡単にまとめる。
不整脈薬物治療ガイドライン2020年改訂版に詳しく記載されている。

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周術期と抗凝固薬

周術期には、抗凝固薬を続けるか中止するかの判断が必要である。
今回は、心房細動について触れてみる。

周術期

基本的に抗凝固薬をやめると血栓のリスクがあることは考えないといけない
例えば、非弁膜症性心房細動の治療においても、血栓塞栓のリスクがあると判断されて薬がスタートになっている。
周術期において、皮膚や口腔内などの直達止血が可能な観血手技に関しては、基本的に休薬しないで行う。
休薬を行った場合も、出血の危険が少ないと判断したら再開することが大切です。

※ガイドラインでも観血手技という言葉が使われている。
観血手技:出血を伴う手技のことを指す

心房細動患者の抗凝固療法における出血リスクからみた観血的手技の分類(ガイドラインより)

【出血低リスク手技(原則として抗凝固薬の休薬不要)】

・ 歯科手術(抜歯、切開排膿、歯周外科手術、インプラントなど)
・ 白内障手術
・ 通常消化管内視鏡
・ 上部・下部消化管内視鏡、カプセル内視鏡、内視鏡的逆行性膵胆管造影など
・ 体表面手術
・ 膿瘍切開、皮膚科手術など
・ 乳腺針生検、マンモトーム生検

※歯科手術や白内障、皮膚関連のものが多い

【出血中リスク手技】(抗凝固薬の休薬を可能なら避ける)

・出血低リスクの消化管内視鏡(バルーン内視鏡、膵管・胆管ステント留置、内視鏡的乳頭バルーン拡張術など)
・ 内視鏡的粘膜生検
・ 経会陰前立腺生検
・ 経尿道的手術(膀胱生検、膀胱腫瘍切除術(TUR-Bt)、前立腺レーザー手術、尿管砕石術)
・ 経皮的腎瘻造設術
・ 緑内障,硝子体手術
・ 関節鏡視下手術
・ 乳腺切除生検・良性腫瘍切除
・ 耳科手術・鼻科手術・咽頭喉頭手術・頭頸部手術
・ 心臓デバイス植込手術
・ 血管造影、血管内手術
・ 心臓電気生理学的検査,アブレーション(心房細動アブレーションは除く)


【出血高リスク手技】(原則として抗凝固薬の休薬が必要)】

・ 出血高リスクの消化管内視鏡(ポリペクトミー、内視鏡下粘膜下層剥離術(ESD)など)
・ 経皮的ラジオ波焼灼術(経皮的アルコール注入術・マイクロ波凝固術)
・ 超音波内視鏡下穿刺吸引法(EUS-FNA)
・ 気管支鏡下生検
・ 硬膜外麻酔,脊髄くも膜下麻酔
・ 開頭術・脊髄脊椎手術
・ 頸動脈内膜剥離術
・ 胸部外科手術(胸腔鏡を含む)
・ 腹部・骨盤内臓手術(腹腔鏡を含む)
・ 乳癌手術
・ 整形外科手術
・ 頭頸部癌再建手術
・ 下肢動脈バイパス術
・ 肝生検
・ 腎生検
・ 経直腸前立腺生検
・ 経尿道的前立腺切除術(TUR-P)
・ 体外衝撃波結石破砕術(ESWL)
・ 経皮的腎砕石術

【出血・塞栓症高リスク手技(抗凝固薬の継続ないし短期休薬)】

・心房細動アブレーション

※出血と血栓のリスクがどちらも高い

抜歯時

抗凝固薬を中止しようが、続けようが出血のリスクに差はない。
また、抜歯時にワーファリンを休薬すると約1%に重篤な脳梗塞を発症し、死亡例も報告されている。
おのため、ワーファリンを継続したまま歯科手術を行う方が良い

消化管内視鏡時

消化管内視鏡処置時にワーファリンを休薬したとき、約1%で脳卒中を発症したことが報告されている。

参考資料
不整脈薬物治療ガイドライン2020年改訂版
Wahl MJ. Dental surgery in anticoagulated patients. Arch Intern Med1998; 158: 1610–1616.

Blacker DJ, Wijdicks EF, McClelland RL. Stroke risk in anticoagulated patients with atrial fibrillation undergoing endoscopy. Neurology 2003; 61: 964–968