インタクトPTH について簡単に整理する。ホールPTHとの違いも少し入れているので参考にしてほしい。
PHT-intact:parathyroid hormone, intact
インタクトPTH について
「低Ca血症や高Ca血症の鑑別」、「副甲状腺機能」を診るために測定される。
副甲状腺ホルモン(PTH)
副甲状腺ホルモン(PTH)は84個のアミノ酸からなるペプチドホルモンである。
血清Ca濃度の変化に反応し、血清Ca濃度とP濃度の調節に関わっている。したがって、PTHの測定はCa代謝異常症の診断に有用である。
PTHが分泌されて尿細管におけるPの再吸収を低下させ、尿中へのP排泄を増加させる。
また、通常の状態であれば・・・低Ca血症により、PTHの分泌が多くなり骨を溶かして血清Ca濃度を一定の値に保とうと働く。
基準値
15~65 pg/mL
※施設により違いがあるので注意
測定の意義
「低Ca血症や高Ca血症の鑑別」、「副甲状腺機能」を診るために測定される。具体的には、「原発性副甲状腺機能亢進症」や「副甲状腺機能低下症の原発性or偽性」の診断に使う。考える際には、血清カルシウムの値と一緒に診る必要がある。
イメージとしては・・・
高Ca血症・高PTH血症の場合、高Ca血症にもかかわらずPTH分泌が抑制されていない状態・・・
「副甲状腺でのPTH分泌調節」の異常が、高PTH血症が高Ca血症の原因であると考えらえれる。
【高値】
原発性副甲状腺機能亢進症、偽性副甲状腺機能低下症、続発性副甲状腺機能亢進症(慢性腎不全、ビタミンD欠乏症、ビタミンD依存症、骨形成性骨転移、急性膵炎、ビスホスホネート使用時など)、家族性低カルシウム尿性高カルシウム血症、異所性PTH産生腫瘍
【低値】
PTH分泌低下型副甲状腺機能低下症((二次性副甲状腺機能低下症、低マグネシウム血症、特発性副甲状腺機能低下症、常染色体優性低カルシウム血症など)、原発性副甲状腺機能亢進症以外の高Ca血症(悪性腫瘍に伴う高Ca血症、ビタミンD作用過剰症、サルコイドーシスなど)
測定上の注意
・食事によるCa摂取の影響がある
・夜間睡眠時に上昇する日内変動がある。
・激しい運動で上昇することがある。
・ビオチンを1日5mg以上投与している患者からの採血は、投与後少なくとも8時間以上経過してから実施
→測定方法によっては、誤差が出てしまうので注意
ホールPTHとの違い
ホールPTHとは異なり、インタクトPTHは、全長のPTHに加え、生理活性を持たない分解産物も含んでる。そのため、数値的には、インタクトPTHの方が、ホールPTHより高値となる。
インタクトPTHは、腎機能の影響を受けて、ホールPTHは、腎機能の影響を受けない。
腎不全患者の血液中には、一部が欠損したPTH(分解物)が存在し、PTHを阻害してしまうことが分かっている。
そのため、生物活性のある全長PTHのみを測定するのが、ホールPTHである。
ホールPTHは、腎透析患者のPTHを測定する際に使われる。
※数値的には、ホールPTHは、インタクトPTHの7割程度になる。