ST合剤 とCPC予防について簡単にまとめる。ST合剤というのは、配合されているスルファメトキサゾールとトリメトプリムの成分の頭文字から命名されている。商品名としては、バクタ配合錠、バクトラミン配合錠等がある。CPCというのは、Pneumocystis jirovecciによるニューモシスチス肺炎のことである。
ST合剤 とCPC
CPC予防の用法が、週3回の事もあるので服薬指導が重要。予防の大切さを伝えるといいかもしれない
ST合剤 が使われる理由
ST合剤が、Pneumocystis jirovecciに対する活性を有しているためである。通常、疾患や薬物治療により免疫が抑制されている患者のニューモシスチス肺炎の予防や治療に使われる。
【参考】
「PCPを発症した膠原病患者に対するST合剤・ステロイド併用療法での死亡率は86%(診断から死亡までの平均日数14±4日間)」という衝撃的な報告もあり、発症すると深刻である。そのため予防がとても大切とされる。
予防の場合の対象患者の例
・ヒト免疫不全ウイルス(HIV)の感染のある人
・同種造血幹細胞移植後の人
・急性リンパ性白血病の人
・アレムツズマブ(マブキャンパス®)使用
・Pl3キナーゼ阻害薬使用
・高用量ステロイド使用
・テモゾロマイド放射線療法
・免疫抑制剤使用
・シクロホスファミドの使用
など
ST合剤の作用機序
微生物の葉酸の合成経路を複数のステップで阻害するのが特徴である。
・スルファメトキサゾールは、ジヒドロ葉酸生合成を阻害する。
・トリメトプリムはジヒドロ葉酸からテトラヒドロ葉酸の合成を阻害する。
結果として、抗菌作用を示す。
バクタ錠の添付文書によると相乗的な効果を発揮するとされている。
ST合剤の投与開始の目安
HIVに感染をしている人以外の目安として、「生物学的製剤と呼吸器疾患診療の手引き」によると下記のような方が対象となりうる。
「プレドニゾロン換算で20mg/日以上の副腎皮質ステロイド薬治療を4週間以上受け、加えて免疫不全をきたすほかの要因(血液疾患、他の免疫抑制薬の使用など)がある患者」
※1995年の論文でもプレドニゾロン20mg/日以上を4週間以上という文言が入っている
用法・用量
【予防の場合】
1日1回1錠の連日服用あるいは、1日2錠を週3回服用する。
【治療の場合】
1回3~4錠を1日3回服用する。
※添付文書的には1日4回も可能
参考資料
J Clin Rheumatol. 2006;12(3):114.
Sepkowitz KA, et al. Pneumocystis carinii pneumonia without acquired immunodeficiency syndrome.More patients, same risk. Arch Intern Med 1995;155: 1125-8.
Clin Infect Dis 2002 May 1;34(9):1293.Mayo Clin Proc. 1996 Jan;71(1):102-3
Natural Comprehensive Cancer Network(2020)
生物学的製剤と呼吸器疾患診療の手引き 日本呼吸器学会
バクタ配合錠、添付文書、インタビューフォーム