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腎臓関連

多発性嚢胞腎の治療 について~トルバプタン(サムスカ)をメインに~

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多発性嚢胞腎の治療 について簡単に整理する

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多発性嚢胞腎 について

① 多発性嚢胞腎の治療

多発性嚢胞腎の進行を抑える治療がメインとなる。トルバプタンが重要である。

薬物治療や食事療法

・バソプレシンV2受容体拮抗薬トルバプタン
・血圧に対する治療
・水分摂取を勧める
・タンパク質を制限する(食事)
・カロリーを制限する(食事)

血圧に対する治療

・レニンーアンジオテンシン系阻害薬
→嚢胞の増大が腎虚血を生じてレニンーアンジオテンシン系を活性化する。そのため、レニンーアンジオテンシン系阻害薬を用いることで尿蛋白減少と腎機能低下の抑制が期待できる
(推奨グレード2C)

・血圧の目標値
・140/90mmHg未満を目標
・尿蛋白陽性患者では、130/80mmHg未満
・50歳未満かつeGFR>60ml/minで、忍容性があれば110/75mmHg未満

※単剤での降圧が厳しい場合は、多剤併用
(推奨グレード2B)

水分摂取

バソプレシンの刺激により腎嚢胞が増大するため、十分な飲水によって
バソプレシンの分泌抑制を期待している。エビデンスは乏しい

②トルバプタン(サムスカ)

効能・効果

「腎容積が既に増大しており、かつ、腎容積の増大速度が速い常染色体優性多発性のう胞腎の進行抑制」

用量・用法

「通常、成人にはトルバプタンとして1日60mgを2回(朝45mg、夕方15mg)に分けて経口投与を開始する。1日60mgの用量で1週間以上投与し、忍容性がある場合には、1日90mg(朝60mg、夕方30mg)、1日120mg(朝90mg、夕方30mg)と1週間以上の間隔を空けて段階的に増量する。なお、忍容性に応じて適宜増減するが、最高用量は1日120mgまでとする」

※夜間頻尿を避けるため、夕方の投与は就寝前4時間以上空けることが望ましい

作用機序・薬理作用

バソプレシンがcAMPを介して嚢胞を増大させる。
トルバプタンのバソプレシン V2-受容体拮抗作用により、嚢胞腎の増大だけでなく、腎機能の悪化、腎臓痛の発生を抑えることが分かっている。
注意点として、多飲、多尿、夜間尿を生じる。
また、肝機能障害、高ナトリウム血症、脱水に気をつけること。

※ガイドライン上、唯一の推奨グレード1A
※成人ADPKDの進行性のものに限られる
※尿量が増えるため水分摂取が必要である

警告(多発性嚢胞腎の部分抜粋)

「1.4本剤は、常染色体優性多発性のう胞腎について十分な知識をもつ医師のもとで、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること。また、本剤投与開始に先立ち、本剤は疾病を完治させる薬剤ではないことや重篤な肝機能障害が発現するおそれがあること、適切な水分摂取及び定期的な血液検査等によるモニタリングの実施が必要であることを含め、本剤の有効性及び危険性を患者に十分に説明し、同意を得ること。」

※薬局でも意識して水分を摂っているか確認する必要はあるだろう

「1.5 特に投与開始時又は漸増期において、過剰な水利尿に伴う脱水症状、高ナトリウム血症などの副作用があらわれるおそれがあるので、少なくとも本剤の投与開始は入院下で行い、適切な水分補給の必要性について指導すること。また、本剤投与中は少なくとも月1回は血清ナトリウム濃度を測定すること。」

「1.6本剤の投与により、重篤な肝機能障害が発現した症例が報告されていることから、血清トランスアミナーゼ値及び総ビリルビン値を含めた肝機能検査を必ず本剤投与開始前及び増量時に実施し、本剤投与中は少なくとも月1回は肝機能検査を実施すること。」

※月1回の採血結果で「血清ナトリウム」と「肝機能」の確認が必要

禁忌(多発性嚢胞腎の部分抜粋)

「2.6 高ナトリウム血症の患者
2.7 重篤な腎機能障害(eGFR 15mL/min/1.73m2未満)のある患者
2.8 慢性肝炎、薬剤性肝機能障害等の肝機能障害(常染色体優性多発性のう胞腎に合併する肝のう胞を除く)又はその既往歴のある患者」

その他の注意点

・用量変更時は、急激な体重変化に注意
・ 増量直後は、「口渇」、「脱水」などの症状に注意
・1日120mg投与時は肝機能障害に特に注意

参考資料
多発性嚢胞腎PKD診療ガイドライン2020
サムスカ、添付文書、インタビューフォーム