多嚢胞性卵巣症候群とメトホルミンについて 簡単に整理する。
2022年9月、「多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)における排卵誘発、多嚢胞性卵巣症候群の生殖補助医療における調節卵巣刺激」への効能又は効果が追加となった。公知申請により、適応拡大となっている。
PCOS:polycystic ovarian syndrome
多嚢胞性卵巣症候群とメトホルミン
・クロミフェンと併用して用いる。
・排卵率を上げるために服用する。
メトホルミンの効能・効果
「○2型糖尿病
ただし、下記のいずれかの治療で十分な効果が得られない場合に限る。
⑴食事療法・運動療法のみ
⑵食事療法・運動療法に加えてスルホニルウレア剤を使用
○ 多嚢胞性卵巣症候群における排卵誘発、多嚢胞性卵巣症候群の生殖補助医療における調節卵巣刺激
ただし、肥満、耐糖能異常、又はインスリン抵抗性のいずれかを呈する患者に限る。」
今回は、2つ目の部分がテーマとなっている。
※糖尿病を合併する場合は、糖尿病の治療を優先すること。
※「ゴナドトロピン製剤を除く排卵誘発薬で十分な効果が得られない場合に本剤の併用を考慮すること。」
→多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)の治療指針2008によると、クロミフェン(クロミッド)と併用する。
用法・用量
「〈多嚢胞性卵巣症候群における排卵誘発〉
他の排卵誘発薬との併用で、通常、メトホルミン塩酸塩として500mgの1日1回経口投与より開始する。患者の忍容性を確認しながら増量し、1日投与量として1,500mgを超えない範囲で、1日2~3回に分割して経口投与する。なお、本剤は排卵までに中止する。
〈多嚢胞性卵巣症候群の生殖補助医療における調節卵巣刺激〉
他の卵巣刺激薬との併用で、通常、メトホルミン塩酸塩として500mgの1日1回経口投与より開始する。患者の忍容性を確認しながら増量し、1日投与量として1,500mgを超えない範囲で、1日2~3回に分割して経口投与する。なお、本剤は採卵までに中止する。」
※どちらの場合も併用
※排卵、採卵までに中止する必要がある
【重要な基本的注意の記載】
「本剤は、不妊治療に十分な知識と経験のある医師のもとで使用すること。本剤投与により予想されるリスク及び妊娠初期の本剤の服用を避けるための服用中止時期について、あらかじめ患者に説明を行うこと」
※妊娠している人に、メトホルミンは禁忌のため重要な事項である。
服用する意義
メトホルミンは、「排卵率」を上げるために服用する。
クロミフェンとメトホルミンは併用するのが一般的である。
クロミフェン単独、メトホルミン単独、どちらの場合よりも2つを併用した方が排卵率が上がる。
そのため、添付文書の記載も併用となっている。
多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)の治療指針2008抜粋
治療指針において、メトホルミンがどの位置にくるのかというと・・・
【挙児希望】あり
↓
【肥満(BMI≧25)】あり
↓
【排卵なし】
↓
クロミフェンの内服開始
↓
【排卵なし】、【肥満、耐糖能異常またはインスリン抵抗性あり】
↓
クロミフェン+メトホルミン併用
↓
【排卵なし】または【妊娠なし】
↓
ゴナドトロピン療法や腹腔鏡下卵巣多孔術へ進む
【参考資料】
メトグルコ、添付文書、インタビューフォーム
多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)の治療指針2008
住友ファーマ問い合わせ