認知症との違いや原因薬剤を理解することが大切
①せん妄について
定義
ポイント:「可逆的」ということ
「認知症では説明できない認知機能の障害を伴う、
急性で可逆的な意識水準の変化した状態」
状態・症状
「錯覚」・「妄想」・「幻覚」・「見当識障害」・「興奮」・「不穏」・「睡眠障害」など
※見当識障害:自分がどこにいるか分からなくなっている状態
※認知症と間違えられることがある。「違い」の理解は大切
発症までの期間とどれくらい続くのか?
発症は数時間から数日が多い。
どれくらい続くのか?
10日から12日のことがよくある。
1ヶ月くらい続く例が15%くらいある。
※夜間せん妄
夕方から夜中など夜間に悪化する例がよく見られる。
発症頻度
外来でも問題となるが入院中の方が深刻
入院中の高齢者の10~30%はせん妄を経験すると言われている。
さらに入院中にせん妄が起きたとき、
入院中の死亡率は20~75%にも達すると言われている。
②せん妄と認知症の違いについて
ポイント:時間的経過が違う。以下に比較した形で記載
せん妄
・いきなり発症する
特に夕方から夜間が注意
・可逆的なこともある(通常数時間から数日)
・注意力が影響を受ける
・「部分的」な認知機能の障害
・環境因子・病態・薬剤が原因
・意識レベルが低下(イライラ・不安・不眠、幻覚、妄想、興奮)
独り言や暴言を言い始めたりする。
認知症
・割とだんだんと進行する。
1日のうちでの変動が少なく 日内変動少ない。
・「意識障害」や「幻覚」は少ない
・記憶が障害される
「全体的」な認知機能障害
※認知症に意識障害やせん妄が加わると鑑別が非常に困難
③原因薬剤について
薬剤が原因のものはどれくらいあるのか?
せん妄全体の10~20%であるため、
薬剤師として原因が薬物にあるのでは?と アンテナを張ることは大切
機序ははっきりと分かっていない。
原因となる伝達物質
アセチルコリン、ノルアドレナリン、グルタミン酸、ドパミン、
グルココルチコイドなどが関与していると考えられている。
(コリン性、γ-アミノ酪酸GABA、ドパミン性)
つまり、「これらに影響を与える環境や薬剤」が原因となる。
環境因子
低血糖、低酸素、脳機能異常(脳梗塞など)、
電解質異常(脱水など)、 ビタミン不足(ビタミンB1、B12など)
普段と違う生活によるストレス(入院など)
※先日服薬指導した患者の家族も肺炎と脱水症での入院だったが、
入院中に暴言を吐いたり、精神的におかしく なったと言われていた。
もしかしたら「せん妄」かもしれない。
薬剤の例
抗コリン薬(抗パーキンソン病薬、認知症治療薬、泌尿器系薬など)
抗うつ薬(セロトニン作動性薬、SSRI、SNRIなど)
抗精神病薬(三環系、四環系)
抗ヒスタミン薬(H1とH2)
GABA受容体を抑制する薬剤 (抗不安薬、睡眠薬、アルコール)
ホルモン系の薬(副腎皮質ホルモンなど)
オピオイド など
暗記するのではなく、伝達物質を考えて
要因となるものをイメージするのがオススメ
参考資料・文献
井上真一郎etc がん患者と対症療法 2011;22
布宮伸 ICUとCCU 2012;36:507-513