ポイント:先発品は一包化不可
おまけ:PDEとPDE阻害剤について
PDE阻害薬の循環器系の副作用を理解する
①アカルディ®カプセルについて
一包化可否
添付文書には、下記のような記載がある。
「本剤は吸湿性があるので、服用直前にPTPシートから取り出すよう指導すること、 また、できるだけPTP包装のまま調剤を行うこと」
↓
一包化できないのか?
↓
吸湿性の程度も薬によって全然違うのでメーカーに問い合わせてみた。
メーカーの返答
「25℃湿度75%の状況下、1週間でカプセル表面にダメージが出る」
一週間で何かしら変化が出てしまうので一包化は厳しい・・・
私の勤める薬局は、14日や30日の一包化が多いため不可能と判断した。
原因
主成分のピモベンダンに原因があるわけではない。
添加物に原因がある。
添加物である「無水クエン酸」が
吸湿性が高いためにボロボロになってしまうのだ。
②ピモベンダン®錠1.25mg「TE」
メーカーに問い合わせたところ
ジェネリックの開発の際に「無水クエン酸」を使わないようにしたとのこと
↓
・安定性 「30℃湿度75%で3ヶ月間遮光 硬度の低下は少し見られるが、
割れることはなく 色調が僅かに変化」
・遮光保存について 「2500ルクス(通常部屋の明るさ800ルクス)を
24時間×20日間の状況下で変化なし」
↓
先発品の関係上「遮光保存」だが
データ上「光にも問題ない」ため一包化可能である。
※ちなみに、粉砕時の有効性・安全性は確認されていないが
過酷試験(40℃、75%で12ヶ月)→外観・含量変化なし
調剤する側の判断であるが、粉砕も完全にNGではない。
※カプセルではなく錠剤なので高齢者にも使いやすい。
おまけ:PDEとPDE阻害剤について
ちなみにピモベンダンは、
細胞内のcAMPの分解を阻害し、細胞内カルシウムイオン濃度を高める。
その結果、「心筋収縮力の増強」と「血管拡張作用」を発現する。
副作用の理解にも役立つのでPDEについて触れる。
PDE:ホスホジエステラーゼ
細かく言うと、ホスホジエステラーゼはジエステル構造を分解する酵素ということだが、
今回注目するのは、「cAMP」を分解する酵素。
これを阻害する薬剤がPDE阻害剤と呼ばれている。
「cAMP」はセカンドメッセンジャーと呼ばれており、
ざっくり説明するのが難しいが・・・
受容体に神経伝達物質が結合した場合に、
最終的な細胞反応が起こるまでの伝達をする役割を担っている。
分布
PDEは、何種類も存在し、それぞれ臓器によって分布が異なる。
PDEⅢ→血小板、心臓、血管平滑筋
PDEⅣ→炎症細胞
PDEⅤ→血管平滑筋
薬剤の例
非選択的なもの→テオフィリン(テオドール®)
PDEⅢ→ピモベンダン(アカルディ®)、シロスタゾール(プレタール®)
PDEⅤ→
シルデナフィル(レバチオ®、バイアグラ®)、パルデナフィル(レビトラ®)、
タダラフィル(シアリス®)
副作用を考える
PDE阻害薬は、cAMPと構造が似ているため
cAMPの分解を抑制することができる。
つまり、PDE阻害薬を服用するとcAMP濃度が上がってしまうため
上記の薬剤を服用すると
循環器関連の副作用が生じる可能性がある。
「頻拍」「心房細動」「血圧低下」など
プレタール®の添付文書の例(警告抜粋)
「本剤の投与により脈拍数が増加し、
狭心症が発現するこ とがあるので、狭心症の症状(胸痛等)に対する
問診を注意深く行うこと」
参考資料
ベーリンガー問い合わせ
トーアエイヨー問い合わせ
アカルディ®カプセル添付文書・インタビューフォーム
錠剤・カプセル剤粉砕ハンドブック 第6版 p444
カラー基本生理学 バーン/レヴィ p44
プレタール®添付文書