簡単なイメージは、糖尿病の患者にも使えるジプレキサ®みたいな薬
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他剤からアセナピン(シクレスト®)舌下錠への変更~抗コリン作用の強いものに注意~
体重増加・糖代謝と受容体~セロトニン2C受容体(2HT2C)・ヒスタミン1受容体(H1)・ムスカリンM3受容体の違い~
アセナピン舌下錠(シクレスト®)の特徴
適応症
統合失調症
陽性症状:幻覚・妄想など
陰性症状:情動的引きこもり、不安、うつなど
に対して改善効果がある。
※適応外使用
双極性障害(急性期や維持期)
※海外では、双極性障害の方が認可されているところが多い
(統合失調症19カ国・双極1型障害61カ国)
双極性障害の型については下記参照
https://mibyou-pharmacist.com/2019/04/05/双極性障害について~Ⅰ型とⅡ型をざっくりと~/
作用機序
ドパミン受容体、セロトニン受容体、
アドレナリン受容体及びヒスタミン受容体
それぞれのサブタイプを遮断し効果を発現する
※禁忌の項目に糖尿病がない。
※オランザピン(ジプレキサ®)やクエチアピン(セロクエル®)は糖尿病に禁忌!!
ムスカリンM3への親和性が少ないため糖尿病の方にも使える。
※セロトニン2C受容体(5HT2)やヒスタミン1受容体(H1)への親和性は、
オランザピン(ジプレキサ®)やクエチアピン(セロクエル®)同様にある。
したがって、体重増加作用はある
【糖尿病の人に禁忌でない理由(詳細)】
ムスカリン受容体(M)への親和性が非常に低いから
抗コリン作用が少ない
そのため、添付文書上「慎重投与」である。
・M3受容体への親和性が低いためインスリン分泌減少
などへの影響が少ない。
また、「記憶障害」、「尿閉」、「目の症状」、「口渇」
などのリスクは低い。
・他剤との比較
オランザピン、クエチアピンはD2受容体遮断作用より
ムスカリン受容体への親和性が高いが
比較するとアセナピンは1000分の1以下である。
・アセナピンは
一応52週までHbA1cへの影響はないことが分かっている。
(国際共同長期継続投与試験)
・添付文書上の記載
「本剤の投与により、高血糖や糖尿病の悪化があらわれ、糖尿病性ケトアシドーシス、糖尿病性昏睡に至ることがあるので、本剤投与中は、口渇、多飲、多尿、頻尿等の症状の発現に注意するとともに、特に糖尿病又はその既往歴あるいはその危険因子を有する患者では、血糖値の測定等の観察を十分に行うこと。[「慎重投与」、「重大な副作用」の項参照] 」
「本剤の投与により、体重の変動(増加、減少)を来すことがあるので、本剤投与中は体重の推移を注意深く観察し、体重の変動が認められた場合には、必要に応じて適切な処置を行うこと。」
※禁忌ではないが、
「血糖の状態」・「体重の増減」は服薬指導のときに
情報を集めて薬剤の影響は出ていないかチェックしなければならない
そして「薬歴」に記載することが大切 だろう。
舌下投与
舌下以外にも、頬と歯茎の間や舌の上から吸収される。
舌下後10分間は飲食しないこと
副作用
「傾眠」12.9%
「苦味」「しびれ」10.1%
「アカシジア」8.4%
「錐体外路障害」6.4%
「体重増加」6.3%
※アカシジア:足がむずむずして、じっと座ってられない状態
その他の特徴
最高血中濃度到達時間Tmax 1.25時間
リスペリドン内用液並みの速さ
→速く効果は出る
医師によっては、暴れているときなどに 無理やり口に突っ込むという話もあった
シクレスト®はとても沢山のことを学べる薬剤。
よかったら参考にしていただけると嬉しい
参考資料
シクレスト®添付文書・インタビューフォーム・メーカー問い合わせ