①ISAの性質(用語の意味)
ISA(intrinsic sympathomimetic activity )とは、 β遮断薬の中で、
化学構造式が「イソプロテレノール」と類似しているために、
それ「自体」、若干の「β受容体刺激作用」を有すること
(内因性交感神経刺激作用)
β遮断薬が、β受容体に対して高い親和性を持ち カテコールアミンの刺激を防ぎつつ、同時に、この間 少量の活性を受容体に与え続けるというもの
(部分作動薬のように働く)
②ISA作用:無(-)と有(+)の特徴
ISA無(-)について
・レニン阻害作用が大きい
(腎傍糸球体細胞β1受容体遮断作用がレニン分泌を下げる)
・使いやすいのは?
頻脈傾向の人
骨格筋由来の高CK血症の人
こむら返りが起きやすい人
※ISA(-)の薬剤によっては、心保護作用があり心不全予後をよくするものがある
薬剤の例(β1選択性のもの)
・アテノロール(テノーミン®)
・ビソプロロール(メインテート®)→心不全に適応あり。
※ビソノテープ®の適応:「本態性高血圧」「頻脈性心房細動」の2つ
・メトプロロール(ロプレソール®)→心不全を改善するデータあり、ただし適応外
薬剤の例(β1非選択性のもの)
・プロプラノロール(インデラル®)
ISA有(+)について
・レニン阻害作用が小さい
徐脈化、夜間狭心症への効果は劣る
(安静時は弱いβ刺激作用を有する)
・脂質代謝への影響も少ない
・心臓へのβ1受容体刺激
→心機能の過度の抑制を回避できる
→「徐脈患者」、「高齢者」にも使いやすい
・血管のβ2受容体刺激
→血管収縮がおこらず、血行動態が悪化しにくい
(四肢冷却のような副作用が少ない)
→「末梢循環障害の人」 に使いやすい
・中等度の腎機能低下者に使いやすい
※デメリット
CPK上昇→心筋梗塞の予防ができない(心刺激のため)
③臨床的な使われ方・考え方の例
頻脈性不整脈に対しては、
「脂溶性でβ1選択性かつISAのない薬剤」が適している
・アテノロール(テノーミン®)
・ビソプロロール(メインテート®)
心臓外の副作用が出にくく有効性が高いと言われている
心保護作用、致死性不整脈、突然死予防効果は「脂溶性」の高いものが良い
※補足
・脂溶性のため「倦怠感」など、中枢性の副作用発現注意
・心保護作用→徐脈作用によるもの
・β遮断薬で「脂溶性」のものは、 腸管から吸収されやすく、
肝臓で代謝されるため、 生体内半減期は短い傾向にある
・β遮断薬は、「喘息の人」「高度の徐脈の人」には禁忌