NSAIDsによる虚血性腎障害 についてまとめる。
おまけ:COXについて
①腎障害が起こる機序
1.腎血流量の減少
↓
2.腎前性AKIが起こる
↓
虚血の状態が持続すると急性の尿細管壊死となる
※AKI(acute kidney injury) :急性腎障害
1.腎血流量の減少
シクロオキシゲナーゼ(COX)阻害によるプロスタグランジン(PG)の産生抑制が起こる。
※PGE2、PGI2合成阻害
リスク因子:
レニン・アンジオテンシン(RA)系亢進(脱水、ネフローゼ)
高齢者、高血圧、CKD、糖尿病
利尿薬使用など
対策:
十分な水分補給などによる腎血流量の保持が大切である。
2.腎前性AKIが起こる
NSAIDs使用開始から1か月以内に発症多い
糸球体濾過量の低下に加え、ナトリウム貯留、浮腫がおこる
高カリウム血症を伴うことがある。
対策:
NSAIDsの中止、適切な腎血流の保持
高度腎不全や尿量減少による体液過剰を呈した際には、
急性血液浄化療法が適応となる
※早期の薬剤中止の場合、通常2~7日間で回復する。
補足:NSAIDsによる腎障害のリスク因子
【腎血流量の低下】
・高齢者
・高血圧
・CKD
・脱水
・糖尿病
【循環血漿量の低下】
・うっ血性心不全
・ネフローゼ症候群
・肝硬変
・細胞外液量の低下
・利尿薬の投与
② NSAIDsによる間質性腎炎を併発したネフローゼ症候群
NSAIDsによるシクロオキシゲナーゼ(COX)阻害
↓
アラキドン酸経路と別経路であるリポキシゲナーゼ経路を介してアラキドン酸からロイコトリエンの産生が亢進
↓
ロイコトリエンが糸球体及び尿細管周囲毛細血管の血管透過性を亢進
↓
「ネフローゼ症候群」と「間質性腎炎」を発症する
※発症時期にバラつきがあるがNSAIDs投与開始後平均5.4か月
通常はNSAIDs中止により可逆性であり、NSAIDs中止後1か月から1年で寛解することが分かっている。
対策
・局所的な痛みには、NSAIDsの局所投与(外用等)で対応する
・解熱鎮痛目的であれば、アセトアミノフェン(カロナール®)を検討する
・NSAIDsを使用する際には、腎機能の確認や脱水の補正を十分に行う
おまけ: シクロオキシゲナーゼCOXとは?
COX-1
全身臓器に恒常的に発現している
COX-2選択性が高いNSAIDsは消化性潰瘍を中心とした副作用の観点からは安全性が高い。副作用が無いわけではないので注意が必要
COX-2
「炎症」の際に誘導する。
「腎臓」、「脳」に恒常的に発現している
COX-2選択阻害薬はCOX-2非選択薬と同様に虚血性腎障害を発症する。
補足
短期間の場合、
COX-2選択阻害薬とCOX-2非選択薬でAKIの発症頻度に差はない。
長期投与においてもCOX-2選択阻害薬とCOX-2非選択薬で慢性的な腎機能低下の発症頻度に明らかな差はない。
すべてのNSAIDsの漫然とした長期投与は避けた方が良い
参考資料
薬剤性腎障害診療ガイドライン2016
日本腎臓学会誌 54:1031-1189,2012