イリボー (ラモセトロン)の特徴とセロトニンを介した下痢について触れる。イリボーは、過敏性腸症候群の下痢タイプに使う薬である。時代も変わって女性に使えるようになっている。
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①セロトニンを介した下痢
ストレスなどによって、セロトニンの遊離が促進
↓
腸管に存在するセロトニン5-TH3受容体を活性化
↓
アセチルコリン↑
↓
消化管運動が亢進
↓
大腸輸送能亢進、大腸水分輸送異常による排便亢進
↓
下痢
※5-HT3受容体を活性化することにより
大腸で発生した痛覚 シグナルが中枢へ伝達されるため腹痛も起こる。
②イリボー (ラモセトロン)の特徴
効能・効果
下痢型過敏性腸症候群
※副作用として便秘があるので注意すること
用法用量
〈男性における下痢型過敏性腸症候群〉
通常、成人男性にはラモセトロン塩酸塩として 5μgを1日1回経口投与する。
なお、症状により適宜増減するが、1日最高投与量は10μgまでとする
〈女性における下痢型過敏性腸症候群〉
通常、成人女性にはラモセトロン塩酸塩として2.5μgを1日1回経口投与する。
なお、効果不十分の場合には増量することができるが、1日最高投与量は5μgまでとする。
※女性の方が便秘になりやすいこともあり、最大用量が違うので注意すること
※ラモセトロンの継続、用量調整には注意すること
・用量調整→1か月
・継続判断→3か月
添付文書より引用:
「用量調整を行う場合は 1 カ月程度の症状推移を確認してから実施すること。また、症状変化に応じた頻繁な用量調整を行わないようにすること。」
「本剤による治療により継続的な症状の改善が得られた場合、本剤の投与を漫然と継続することなく、投与開始 3 カ月を目処に、治療の継続、終了を検討すること」
薬理作用・作用機序
ラモセトロンは、セロトニン5-TH3受容体を選択的に阻害
↓
大腸輸送能亢進や大腸水分輸送異常による下痢症状を改善
↓
さらに、大腸痛覚伝達を抑制して、知覚過敏や腹痛を抑制
※腹痛に効果があるところがメリットが大きい
特徴
・用量依存的に作用
・ラモセトロン以前の過敏性腸症候群の薬剤は、腹痛に対しての作用がいまいちだったが、腹痛に対して効果的
・ロペラミドなどと違い「自然排便」に影響しない
・既存薬のナゼア®と同一成分
・効果発現は比較的速い
添付文書より体内動態データ引用:
「血漿中未変化体濃度はいずれも投与後約 2 時間に Cmaxに達した後、7 時間の半減期で消失した」
参考資料
イリボー®添付文書、インタビューフォーム
新規下痢型過敏性腸症候群治療薬 ラモセトロン塩酸塩(イリボー®錠)の薬理学的特徴および臨床試験成績
平田拓也,他 日薬理誌(Folia Pharmacol. Jpn.)133,281~291(2009)