抗菌薬選択圧と菌交代現象の違い について~耐性菌を防ごう~
・耐性菌の発現メカニズムについてもざっくりとまとめる
→抗菌薬の使用に関係「する」ものと「しない」ものを整理する
・耐性菌伝播の「抗菌薬選択圧」と「菌交代現象」について理解する
おまけ:ESBLについて
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①耐性菌の発現メカニズムについて
抗菌薬を使用すると必然的に発生するもの
(もともとある遺伝子の変異によるもの)
もともと「染色体」上に存在している抗菌薬標的部位(タンパク質)の遺伝子
が「変異」することにより耐性化
・耐性菌の拡大を防ぐためには?
耐性菌「発生そのもの」を抑制するための適正使用が大切
↓
適切な抗菌薬の「選定」と「十分な量」・「期間」による治療達成
※中途半端でもダメだし、使用期間が長すぎてもダメ
使用状況の確認や見直しなどをしていく必要がある
・耐性菌の例
フルオロキノロン耐性大腸菌・緑膿菌
カルバペネム耐性大腸菌・緑膿菌
PISP(penicillin-intermediate resistant Streptococcus pneumoniae)
PRSP(penicillin-resistant Streptococcus pneumoniae)
MRSA(methicillin-resistant Staphylococcus aureus)
など
抗菌薬を使用しても自然には発生しない
「もともと耐性遺伝子を持っているもの」
あるいは・・・
「他の耐性菌から耐性遺伝子を獲得したもの」
(耐性菌の情報はプラスミドによって伝達される)
・抗菌薬適正使用での工夫
耐性菌の「患者間伝播」・「拡散防止」を目的とした適正使用
→『選択圧』とならないような複数の抗菌薬の使い分け
※「手すり」「医療機器」「皮膚」などを清潔に保つことも大切
・耐性菌の例
MRSA(methicillin-resistant Staphylococcus aureus)
VRE(vancomycin-resistant enterococci)
ESBL(extended-spectrum β-lactamase)産生菌(下記に補足あり)
など
補足:耐性菌と感性菌
「耐性菌」とは反対に、抗菌薬が効く菌を「感性菌」という。
アメリカでのデータでは、感性菌と比べ耐性菌による死亡率は2~3倍もある
②抗菌薬選択圧と菌交代現象について
抗菌薬選択圧とは?
耐性菌が発現。あるいは、接触感染などにより獲得
↓
抗菌薬の使用により、
「感受性菌」は死滅、「耐性菌」が生き残る現象
↓
これを「抗菌薬選択圧」という。
菌交代現象について
上記の「抗菌薬選択圧」の状態が生じる
↓
「耐性菌」が増殖する
↓
「耐性菌」が「感受性菌」より増殖する現象を
「菌交代現象」という
③おまけ
ESBL(extended-spectrum β-lactamase)産生菌とは?
基質拡張型β-ラクタマーゼ産生菌のことである。
ESBLは、細菌の名前ではなくβ-ラクタマーゼの一種
ペニシリンしか分解できなかったβ-ラクタマーゼ(=ペニシリナーゼ)が変異し、
セフェム系まで分解できるようになったもの
ESBL産生菌は大腸菌など腸内の細菌に多く、尿路感染症などの原因となる
※βラクタマーゼ:β-ラクタム系抗菌薬を分解する酵素のこと
参考資料
日本臨床微生物学会ファクトシート 2016,6