ダサチニブ (スプリセル®)について解説する。副作用を中心に整理する。グリベック®との違いも少し載せている。
①ダサチニブ の適応症
・慢性骨髄性白血病
・再発又は難治性のフィラデルフィア染色体陽性急性リンパ性白血病
②ダサチニブ の作用機序
慢性骨髄白血病やフィラデルフィア染色体陽性急性リンパ性白血病の発症に関わる チロシンキナーゼ(Bcr-Ablチロシンキナーゼ)という酵素の働きを阻害し白血病細胞の増殖を抑える。
ダサチニブがBcr-Ablチロシンキナーゼに結合することで Bcr-AblチロシンキナーゼにATPが結合出来ないようにする。
補足:何に結合するの?
・フィラデルフィア染色体から作られるBcr-Abl蛋白と結合する 。
・突然変異にて変形した Bcr-Abl蛋白とも結合すると考えられている。
・Bcr-Abl蛋白は体内で活性型や不活性型になっているが、
スプリセル®は関係なく結合する。
・他の白血病に関連するいSrc蛋白の働きも抑える 。
③ダサチニブ の副作用
血球減少
最初の「2ヶ月」で多い
↓
下がってもコントロールできていればOK
減少する血球によって注意するものは異なる
白血球→感染症
赤血球→貧血
血小板→出血
胸水
スプリセル®を服用した人の4人に1人に生じる
服用時期に関係なく起こりうる
↓
利尿剤やステロイドで対応
(ステロイドの処方があれば結構溜まっている)
また、咳が出ていると溜まっている水が多い。
胸水の機序は不明
※ただし、胸水の副作用があると、薬の効果が高いことが分かっている。
大顆粒リンパ球の増加により、
NK細胞活性が上がることで免疫が上がっていると考えられている。
※胸水を注意する人 高血圧・高齢者・心疾患を持つ人注意
皮疹
グリベック®より少なく、ほとんど起きない
浮腫
グリベック®は「下肢」に多い
スプリセル®は「胸水」が多い
※用法と胸水について
1日1回の方が1日2回よりも胸水が少ない
現在、1番多い処方は、1日1回100mg
100mgスタートの場合が多く。
慣れている医師だと1週間毎の処方ではなく、長めに処方することもある。
④血液検査に関して
添付文書には
「本剤投与により,白血球減少,好中球減少,血小板減少,貧血があらわれることがあるので, 血液検査は投与開始前と投与後の2ヵ月間は毎週, その後は1ヵ月毎に,また,患者の状態に応じて適宜行うこと。」
と記載されている。
※開始時の量
医師により違いがあるが、50mgからスタートして増量するか
100mgからスタートして下げていく場合もある
※80歳くらいだと20mg/日が良いという報告もある
※増量された時、効果がもっと欲しい時が多い
⑤PPIとの相互作用について
チロシンキナーゼ阻害薬とプロトンポンプ阻害薬(PPI)相互作用
スプリセル®はチロシンキナーゼ阻害薬の1つである。
チロシンキナーゼ阻害薬の吸収過程における溶解性が pHに依存している
↓
PPIによる胃酸分泌抑制 されると・・・
↓
pHが上昇するにしたがってスプリセル®の溶解度が低下
↓
体内への吸収が低下
次にデータを示すが思ったより吸収が低下してしまうので注意が必要である
データについて
・スプリセル®とファモチジンの場合
ファモチジン投与10時間後にスプリセル®投与
Cmax63%低下
AUC61%低下
・スプリセル®とオメプラゾールの場合
オメプラゾールを4日間投与。最終投与22時間後にスプリセル®を服用
Cmax42%低下
AUC43%低下
つまり、時間を空けてスプリセル®を服用しても吸収が阻害されてしまう
対策
pHに影響しない制酸剤に変更する。
医師によっては、PPIを変更するだろうし、
そのまま効果の減弱をうまく利用することもあるだろう。
薬剤師としては、一応、初回における疑義照会をすべきだろう
参考資料
スプリセル®勉強会資料
添付文書・インタビューフォーム