リフィーディング症候群 について、ざっくりと(症状・理由・対策)まめとる。
①リフィーディング症候群 発見された経緯
発見された?
報告された経緯は悲しいかな
太平洋戦争である。
日本人捕虜にご飯を与えた際によくわからない死を遂げた例が最初らしい。
捕虜にとっては最後の晩餐となったのだろう
②どんな状態・症状?
状態
「数日(4日程度)ではなく、1週間もしくはそれ以上、
低栄養状態に置かれていた患者へ急速に栄養を投与した際に引き起こされる代謝異常のこと」
症状
リン欠乏 →心不全、不整脈、呼吸不全、意識障害、けいれん、手足の麻痺
マグネシウム欠乏→不整脈
症状はさまざまで、心停止など致死的な合併症例もある。
③起こる理由
低栄養状態では蛋白異化に傾いている
↓
急速な栄養投与
↓
同化に変わる
↓
細胞内液が増加
↓
グルコース利用に伴って 細胞外液、血清から電解質が細胞内に移動して
低リン血症、低マグネシウム血症となる
※カリウム、リン、マグネシウムが同じ動きをする
↓
ヘモグロビンの酸素運搬能力が低下してしまう (酸欠状態とは恐ろしい・・・)
詳細(なぜ酸欠?)
低リン血症によりヘモグロビンの酸素運搬能力が低下する
理由
ヘモグロビンは「酸素」と親和性が高く、末梢で酸素を放出する。
酸素放出の際に必要となる物質が2,3-ジホスホグリセレート(DPG)
低リン血症になると 赤血球の中のDPGの濃度が下がるため、
ヘモグロビンが酸素を放出できない。
(モニターではヘモグロビンの酸素飽和度は異常なし)
その結果、低酸素状態が起こる。
酸素飽和度は参考にならないため リン、マグネシウムの測定が有効。
急に低下するため、経時的な測定が大切である。
もう1つの落とし穴
低栄養状態
↓
体内のビタミンB1低下
↓
急なグルコースの投与 (栄養投与)
↓
ビタミンB1消費が増加
↓
ビタミンB1欠乏症になってしまう
↓
乳酸アシドーシスを起こす
※低リン血症も原因の1つ
ビタミンB1欠乏により起こること
ウェルニッケ症候群(眼性異常、運動失調、錯乱状態、低体温、昏睡)
コルサコフ症候群(逆行性健忘、作話症)
④危険なケース
独居老人や認知症の人が
低栄養状態で病院に運ばれた際に栄養剤を投与されたとき等
注意が必要である。
細かい話になると下記を参照
英国NICE診療ガイドラインによると・・・
✽下記の基準が1つ以上当てはまるもの
・BMl が16kg/㎡未満
・過去3~6ヵ月で15%以上の意図しない体重減少
・10日間以上の絶食 ・再摂食前の低K 血症,低P 血症,低Mg 血症
✽下記の基準が2つ以上当てはまるもの
・BMI が18.5kg/㎡未満
・過去3~6ヵ月で10%以上の意図しない体重減少
・5日間以上の絶食
・アルコール依存の既往又は次の薬剤の使用歴がある
:インスリン,化学療法 制酸薬,利尿剤
⑤対策
投与エネルギー量としては
「現体重×10kcal/kg/日(重症では5kcal/kg/日)」程度から開始し、
モニタリングしながら100~200kcal/日ずつ増量していき、
1週間以上をかけて目標量(25~30kcal/kg)まで増やす。
参考資料
http : //www.nice.org.uk/
四国医誌68巻1,2号23~28 APRIL25,2012(平24)