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その他 検査値 腎臓関連

ロケルマ 懸濁用散分包(ジルコニウムシクロケイ酸ナトリウム水和物)と他剤の違いについて

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ロケルマ 懸濁用散分包について、前回は、作用機序などをメインに触れた。
今回は、既存の高カリウム血症治療薬との違いを重点的に取り上げたいと思う。
便秘が多い人や服用回数が多い人に使いやすい。
ジルコニウムは野菜や普通の食事に入っていたり、歯の詰めものに使われたりしているので安全性は高い。

ロケルマのその他の特徴は下記を参照
ジルコニウムシクロケイ酸ナトリウム水和物(ロケルマ®懸濁用散分包)の作用・用法・使い方について

他剤の特徴は下記を参照
アーガメイト®やカリメート®による便秘について~ラグノス®NF経口ゼリーも少し~

カリメート®・アーガメイト®とケイキサレート®の違い~便秘や下痢に注意~

①適応症の違い

血清のカリウム値が上がっていくと死亡率が上昇するというデータがある。
そのため、専門医もカリウムを下げるために努力するのだ。

ポリスチレンスルホン酸Ca経口ゼリー(アーガメイト®)、カリメート®の場合

「急性および慢性腎不全に伴う高カリウム血症」

※急性および慢性腎不全という記載があるため、適応症の壁が生じてしまう

ロケルマの場合

「高カリウム血症」

冠が付いていないため、非常に幅広く使える。
ロケルマ®には、CKDの記載がないため使いやすい。

例えば、CKD以外の原因での血清カリウム値の上昇にも使える。
「消化管出血」や「腫瘍崩壊症候群」などでもカリウムが上がったりするので守備範囲が広い。
他にも食事によるカリウム上昇もある。

インタビューフォームにも以下の記載がある。

「慢性血液透析患者を含む CKD、糖尿病、心不全などの合併症を有し、RAAS 阻害剤などの薬剤を併用している幅広い日本人高カリウム血症患者に対する有効性及び安全性が確認された。したがって、効能・効果を「高カリウム血症」と設定した」

RAAS阻害剤による高カリウム血症にも使えるのはいい。

②安全性の違い

便秘が少ない

非ポリマー無機陽イオン交換化合物であり、水分により膨潤しないという特徴がある。
体内に吸収されない均一な微細孔構造を有する非ポリマー無機陽イオン交換化合物である。
また、既存のポリマー製剤は、水による膨潤で便秘を生じやすい。

水分による体積変化のデータもあるので見ておくと良い

「本薬及びポリスチレンスルホン酸ナトリウムを水と混合したときの体積の変化を検討した。有機ポリマー樹脂であるポリスチレンスルホン酸ナトリウムの体は混合40分後に水の吸収により約92%増加した一方、本薬の体積は混合40分後に約17%減少した」

水分で体積は増加しないのがポイントである。
非ポリマー製剤なので膨潤しない!

禁忌がない

カリメート®やポリスチレンスルホン酸Ca経口ゼリーには
「腸閉塞の患者」の記載があるが、ロケルマ®にはない。
禁忌の記載がないのである。

便秘のところでも触れたが、膨潤しない特徴を有するためである。

併用注意が少ない

ロケルマは、併用注意がほかの製剤より少ない
金属イオンとの併用注意がない。
甲状腺ホルモンとの併用注意もない

③作用面の違い

ロケルマの方が、選択的に作用する。

既存薬であったポリスチレンスルホン酸ナトリウムは、「カリウムイオン」だけでなく「カルシウムイオン」や「マグネシウムイオン」も吸着する性質があった。

ロケルマ(平均約3Å)はカリウムイオン(2.98Å)と大きさが近い。
そのため、ロケルマは「カリウムイオン」を選択的に吸着することが出来る。カルシウムイオン(2.00Å)、マグネシウムイオン(1.44Å)は小さいためすり抜けるイメージで捕捉されにくい。

ポリマー関連のポリスチレンスルホン酸Ca経口ゼリーやカリメート®は消化管下部で効果を発揮するが、
ロケルマは消化管全体、上部も含めて効果を発揮する。
そのおかげで、ロケルマ®の方が速く効くことが分かっている。

おまけ:経鼻胃管投与(インタビューフォーム引用)

「経鼻胃管投与をする場合は本剤が詰まる可能性があるので、以下の手順を参考に投与すること。

(1) 分包内の全ての薬剤を容器に空け、約25 mLの水に懸濁した後、注入器に吸引する。本剤が沈殿した場合は、再び懸濁してから吸引する。

(2) 外径 8 Fr(フレンチサイズ)以上のチューブを用い、注入器とチューブを接続し、懸濁液を投与する。このとき、沈殿した本剤により注入器の先端が閉塞しないよう、注入器を水平にした状態から先端をやや上方に傾け、懸濁状態を保つために注入器を動かしながら投与する。本剤が注入器の先端に詰まった場合は、注入器を振とうし、本剤を再度懸濁させる。

(3) 容器中の残薬を約 15 mL の水で懸濁し、再度注入器に吸引し、
上記(2)と同様に投与する。

(4) 懸濁液投与後、約10 mLの水でチューブをフラッシュする。」

※8Frでは検討されているので知っておくと良い

おまけ:動画

参考資料
ロケルマ®添付文書、インタビューフォーム
メーカー問い合わせ、勉強会