鉄剤と食品の相互作用 について触れる。ヘム鉄と非ヘム鉄の違いも整理する。
仕事で後輩から質問があったので簡単にまとめる。
年配の看護師からも質問が時々ある。
おまけ:鉄の調理器具を使うと鉄の摂取量が増える。
①鉄剤と食品の相互作用
鉄剤と緑茶
以前は、緑茶に含まれる「タンニン酸」と「鉄」が
難溶性化合物を形成して鉄の吸収が阻害されると考えられていた。
(30年くらい前の論文)
ただし、臨床試験で一緒に服用して問題ないことが示されているので
緑茶を制限する必要はない。
鉄剤の中でも徐放性製剤や硫酸第一鉄製剤より
クエン酸第一鉄製剤(フェロミア®)の方が影響が少ない。
鉄剤とビタミンC
鉄剤を還元型にして鉄の吸収を高める。
【理由】
鉄は十二指腸から吸収される。 腸液の環境下で十二指腸は、弱アルカリ性なので二価の鉄の方が吸収がいい。 ビタミンCによりFe3+がFe2+になるため
併用することで吸収を高めることができる。
ちなみにOTC(ドラッグストアでも購入可能)では 鉄の成分とビタミンCがだいたいセットになってます。
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②ヘム鉄と非ヘム鉄の違い
ヘム鉄
動物性食品(肉、レバー、魚など)に多く含まれる。
吸収率は、20%程度である。
※過剰症に注意
「神経痛」「筋肉痛」「知覚異常」など
非ヘム鉄
植物性食品(野菜・穀物など)に多く含まれる。
吸収率は、5%程度である。
ほうれん草なんかは鉄分が豊富なイメージですが、吸収率は低い。
動物性食品(ヘム鉄)の方が 植物性食品(非ヘム鉄)より吸収がいい。
ヘム鉄の方が構造上、食物繊維やタンニンの影響を受けにくいためである。
※ヘム鉄は、鉄イオンがポルフィリン環に囲まれている
上記でも示しているが、5倍程度ヘム鉄の吸収の方がよい。
おまけ:鉄の調理器具を使うと鉄の摂取量が増える
例えば、南部鉄器で調理すると鉄分が溶出することが分かっている。
焼き物よりも煮込み料理の方が多く溶け出す。
また、南部鉄器から溶け出す鉄分はヘム鉄である。
鉄の調理器具を使うのが面倒という方は、「鉄玉子」というものがある。
楽ちんなのでオススメである。
参考文献
茶と鉄剤:緑茶の飲用は徐放性鉄剤の効果に影響を与えない
日本薬剤師会雑誌38:1986
E.B.Rasmussen et al.:The Journal of Clinical Investigation, 53(1), 247-255 (1974)
L.Hallberg et al, Scandinavian Journal of Gastroenterology, 14(7), 769-779 (1979)