味覚障害 について考える。
高齢者の味覚障害の中で薬剤性のものは頻度が高い。
70歳以上の症例では30%、49歳以下の症例だと15%以下ともいわれている。
このブログでも亜鉛について何度か触れているが
色々な角度でまとめることも大切だろうと思い
簡単に整理する。
今回は、唾液、亜鉛、神経、味蕾細胞の4つに焦点を当ててみる。
亜鉛についての別の記事は下記を参照のこと
亜鉛と医薬品の相互作用について
亜鉛(Zn)について~亜鉛不足、摂るべき量、食べ物等~
低亜鉛血症とガイドライン~どのガイドラインに載っている?~
酢酸亜鉛水和物製剤(ノベルジン®)~特徴と注意点~
低亜鉛血症と治療について~診断基準や原因~
①唾液の減少による 味覚障害
まずは味の感じ方を整理する。
食べ物を食べて、唾液に味を感じるための水溶性物質が溶ける
↓
その後、舌乳頭に多く存在する味蕾の味覚受容体に結合する
↓
味覚受容体から神経伝達物質が放出されて神経に情報が伝達される
↓
味を感じることが出来る
つまり、唾液が減少すると味を感じにくくなる。
※そのため、唾液腺マッサージをしたり、ガムを噛むなども良い。
舌苔があると味を感じにくいので口腔ケアも大切である。
原因薬剤
・抗うつ薬
・抗コリン作用をもつ薬、
・抗ヒスタミン薬
などの「口渇」、「口内乾燥」を引き起こす薬剤は原因となりうる。
原因となる病態
病気としては、口腔カンジダがある。
→つまり、吸入ステロイドなども注意が必要ということになる。
②亜鉛の欠乏
簡単に言うと、味蕾細胞の障害が起こる。
亜鉛は味蕾の新陳代謝(10日くらいで代謝を繰り返している)に必要なので、
亜鉛が欠乏すると味蕾の機能(代謝回転が遅れる)が低下してしますため、
味覚を感じにくくなる。
亜鉛とキレートを形成する薬剤
亜鉛と薬剤がキレートを形成して排泄が促進される。
有名な薬剤としては、
・フロセミド
・チアマゾール
・チオプロニン
・グルタチオン
・テトラサイクリン
・レボドパ製剤
・L-ドーパ(マドパー®、メネシット®など)
・炭酸リチウム(リーマス®)
・アロプリノール(ザイロリック®)
・カルバマゼピン(テグレトール®)
など
※チオール基、カルボキシル基、アミノ基を有するものが多い
排泄が促進される病気
今回は、アルブミンが関係するものに注目する
「ネフローゼ」、「肝不全」、「糖尿病、「透析」
アルブミンと亜鉛は血中で結合しているので、アルブミンが欠乏すると排泄されやすくなる
※透析患者では、塩味が分からなくなったりするらしい
その他の原因
胃の切除後の吸収障害がある。
胃がんや何かの手術で胃を切除した後は注意が必要である
③神経障害
味覚を伝達する神経が障害される。
・ビタミンB12の欠乏
・抗悪性腫瘍薬
・インターフェロン
などが報告されている。
④味蕾細胞の障害
・嗜好品による障害→タバコ、酒、辛い食べ物
・口内炎や歯周病
・年齢的な衰え
⑤対応
原因となりうる薬を長期服用で起こることもあるが、2~8週間で味覚障害が起こることもある。新しく薬を飲み始めた場合は、2~8週間を目安に味を感じるかチェックすることも大切である。
原因薬剤を中止してもすぐに味覚障害が治ることは少ない。
40週間くらいかかるという医師もいるぐらいである。
そのため、絶対に必要な薬剤であれば中止はせずに亜鉛を補充する治療法を選択することも大切。
プロマック®やノベルジン®などを使う