ボノプラザン (タケキャブ®)と皮膚粘膜眼症候群、多形紅斑について触れる。
平成31年3月19日 厚生労働省医薬・生活衛生局安全対策課長通知
(薬生安発0319第1号)より、ボノプラザンの重大な副作用に「皮膚粘膜眼症候群(Steavens-Johnson症候群)、多形紅斑」が追記された。「皮膚粘膜眼症候群(Steavens-Johnson症候群)」と「多形紅斑」の症状は似ているが、違う疾患だと考えられている。鑑別は、医師にしか出来ないが、「何に注意すべきか?」は伝えることが出来るので簡単にまとめる
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①ボノプラザン (タケキャブ®)
カリウムイオン競合型アシッドブロッカーであり、プロトンポンプインヒビターに分類されている。
既存のプロトンポンプインヒビター(PPI)との違い
ランソプラゾールなどのPPIは、
酸の存在下で活性体に変換されてプロトンポンプのSH基に非可逆的に結合し、酵素活性を阻害するが・・・
ボノプラザンは既存のPPIよりも塩基性が高く、
胃壁細胞の分泌細管に留まり
カリウムイオンと競合的・可逆的に酵素活性を阻害し、
酸分泌抑制作用を示す。
※ボノプラザンは酸環境下にも強い
※上記の理由で通常の粉砕の方法で粉砕することが出来るため扱いやすい。
また、簡易懸濁法を行うことも可能である。
おまけ:タケキャブの簡易懸濁の様子
今回のDSUで何を注意するのか?
「皮膚粘膜眼症候群」と「多形紅斑」の鑑別は、医師でないと厳しいと思う。
ただ、「どんな症状が出たら受診すべきか」
薬局でも伝える必要があるのでないだろうか(全員というわけではなく)
例えば、下記の症状があれば連絡をもらうように伝えることも良いかもしれない。
・赤い発疹(円に近いもの)
・皮膚が赤くなる→水ぶくれが出来る
・発熱
・唇や目が赤くなる
・トイレの時に痛い
※特に服用直後に高熱を伴う発疹等があれば
すぐに服薬を中止し、
医療機関を受診するように伝えることも必要だろう
ただ、他のよくある副作用も服薬指導で伝える必要があるので工夫が難しいところである。
②皮膚粘膜眼症候群
皮膚粘膜眼症候群(Steavens-Johnson症候群)は薬疹の1つである。
全身性の皮膚粘膜疾患。
原因
薬剤性だったり、ウイルス感染症(マイコプラズマなど)が関係していたりする。
これらの何かが原因となり、体の免疫系が反応し、
重篤な「壊死性」の症状が出る。
原因薬剤は多すぎてとても覚えられない。
原因が薬剤の場合は、服用後2週間以内の発症が多い。
しかし、1か月超えて生じる場合もある。
※原因薬剤の例
・抗菌薬
・高血圧の薬
・痛風治療薬
・解熱鎮痛剤
・抗けいれん薬
・抗不安薬
・精神科系の薬
・緑内障治療薬
・筋弛緩薬
など
好発部位・症状
【好発部位】
好発部位は、「皮膚」と「粘膜」である。
粘膜としては、眼、口、陰部などが知られている。
【症状】
ざっくり言うと、熱、粘膜症状、紅斑を伴う皮疹
※詳細
・発熱(38℃を超える)
・粘膜充血
・口唇びらん
・咽頭痛
・陰部びらん
・排尿痛
・皮疹(紅斑→水泡→びらん)
・両眼性の急性結膜炎
※全身性の皮疹増えるにつれて、眼の炎症も増える。
※眼症状合併率60%程度
【補足】
死亡率は3%程度(多臓器不全・敗血症などを合併)
治療
・疑われる薬の中止
・ステロイドの全身投与
※発症早期の方が良い。
※ステロイドで効果がない場合は、免疫グロブリン製剤を投与
・眼科的処置
③多形紅斑
多形紅斑は、「皮膚に限局するもの」と「全身症状を伴い粘膜病変を有するもの」があり、皮膚粘膜眼症候群(Steavens-Johnson症候群)とは、発生機序が違うと考えられている。
原因
薬剤性、自己免疫疾患、妊娠、寒冷刺激、がん、ウイルス感染症(マイコプラズマや単純ヘルペスウイルスなど)、連鎖球菌などが原因として分かっているが鑑別は難しい。
皮膚に限局する多形紅斑の方が多い。
多くはアレルギー性の体の反応と言われている。
非アレルギー性のものもあると考えられている
原因が薬剤の場合は、服用後2週間以内の発症が多い。
しかし、1か月超えて生じる場合もある。
※原因薬剤の例
・抗菌薬
・高血圧の薬
・痛風治療薬
・感冒薬
・消化性潰瘍薬
・精神科系の薬
・抗がん剤
・解熱鎮痛薬
など
好発部位・症状
皮疹を生じるが直径は、6mmから20mm程度。
多くの場合四肢伸側の関節部に対称性に生じる。
※四肢伸側→手背、足背、ひじ、膝など
※炎症がひどい場合は水泡となる場合がある。
全身症状や粘膜症状がある場合は、皮膚粘膜眼症候群(Steavens-Johnson症候群)を疑う。
治療
感染症との鑑別を行うことが大切であり、だいたい2~4週間で自然治癒する。
・皮疹→ステイロイド外用薬、抗ヒスタミン薬内服
・粘膜疹があれば、皮膚粘膜眼症候群(Steavens-Johnson症候群)を疑い
→ステロイド全身投与
参考資料
平成31年3月19日 厚生労働省医薬・生活衛生局安全対策課長通知
(薬生安発0319第1号)
厚生労働省:重篤副作用疾患別対応マニュアル,スティーブン・ジョンソン症候群
2017年6月改訂