失禁関連皮膚炎 のIADについて簡単にまとめる。
IAD:Incontinence Associated Dermatitis
失禁関連皮膚炎について簡単にまとめる
①失禁関連皮膚炎
IADとは?
IADは、尿または便が皮膚に接触することにより生じる皮膚炎である。
オムツが常態化した高齢者にとって問題となる皮膚炎のこと。
様々な皮膚炎が問題となる。
高齢者の皮膚は弱っているのだ。
どんな状態かと言うと・・・
「皮膚が薄い」、「ドライスキン」、「皮膚のバリア機能が低下している」
そのため、
尿や便が沁み込みやすい・・・
高齢者の皮膚は、
便などに含まれる消化酵素や蒸れにより
皮膚が柔らかくなってしまっている。
IAD:Incontinence Associated Dermatitis
発生機序
尿や便の付着・水分↑
↓
この回数や接触時間が増える
↓
角質細胞の膨潤・崩壊が起こる
↓
皮膚のバリア機能が壊れる
↓
刺激物の浸透が起こる
↓
TEWLが上昇する
↓
皮膚のpHが上がる
(アルカリ性になる)
※細菌により尿素が二酸化炭素とアンモニアに分解される
↓
角化細胞が損傷する
↓
体内細胞からサイトカインが放出される
↓
サイトカインのせいで炎症が起こる
↓
さらに、ヒスタミンなども絡み
↓
痒みや炎症がひどくなる
↓
IADが起こる。
※TEWL: transepidermal water loss
経皮水分喪失量
どんな皮膚炎がある?
・湿疹
・皮膚炎群(おむつ皮膚炎)
・アレルギー性接触皮膚炎
・物理化学的皮膚障害
・皮膚表在性真菌感染症
※紅斑、びらん、潰瘍などの症状が起こる
好発部位
基本的には、オムツ周りに起こりやすい。
皮膚が弱い部分は注意が必要である。
【好発部位】
・下腹部
・会陰部
・肛門周囲
・臀裂
・臀部
・鼠径部
・恥骨部
など
②対策
とにかくオムツ周りなどを清潔にすることが大切であり、丁寧にケアしなくてはならない。
対策の例を箇条書きにまとめる。
「清拭」、「洗浄」、「保湿」の3つの観点に注目する。
対策の例
【清拭】
清拭は、排泄・オムツ交換ごとに行う
※拭き取るものは使い捨てのものがおススメ。おしりふき等
※清拭のみで排泄物が取れないときは、ぬるま湯などで洗い流すと良い
【洗浄】
1日1回は洗浄剤(弱酸性のもの)できれいにする。特に陰部・臀部は大切である。回数が多いと洗剤での刺激が多くなるのでやめること。
皮脂を取り除くほどの強い洗浄剤はおススメ出来ない。
例えば、石鹸などのアルカリ性の洗浄剤は皮脂を奪い取る。
※強く擦らないこと。ゴシゴシは厳禁
※刺激の強いスポンジやナイロンタオルはダメ
※基本的に皮膚のバリア機能が低下しているので優しく扱うこと
※拭き取る際も注意で押すイメージで行う。水分が残ると蒸れて皮膚炎の原因となるので鼠径部など注意すること。水分は真菌症の原因にもなる。
【保湿】
保湿剤は1日1回を目安に行う。入浴後あるいは洗浄後が効果的である。
皮膚を保護するタイプの保湿剤がよい。セラミドなどを含むと修復を助けることができる。
参考資料
一般社団法人 日本創傷・オストミー・失禁管理団体
IAD-SETに基づくIADの予防と管理、IADベストプラクティス