チアジド系 (サイアザイド系)利尿薬についての基本的イメージを整理する。
利尿剤は個人的に覚えにくいので色々な情報を入れながらまとめる。
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チアジド系 (サイアザイド系)利尿薬について
特徴
【利尿作用と降圧作用】
利尿効果が弱く、降圧作用が強い。
そのため、心不全のうっ血症状に対して単独で用いるケースは少ない。
その場合は、ループ利尿薬と併用される。
ループ利尿薬が効きにくい人には効果的だったりする。
ループ利尿薬を長期使用した場合の問題点として、
遠位尿細管の代償性肥大によりナトリウムの再吸収が亢進する。
この時、チアジド系利尿薬を併用すると効果的な利尿作用が期待できる。
また、ループ利尿薬では利尿作用が強すぎる場合は、チアジド系利尿薬を用いる。
【腎機能低下時に使用しない理由】
腎機能が低下している場合は、効果が期待できないため使用されない。
原尿のうち15%程度しか遠位尿細管に到達しないので、
腎機能低下で原尿の量が減れば、遠位尿細管に到達する尿自体が少なくなる。
そのため、利尿効果に期待がもてなくなるのである
【その他の特徴】
・有効率が高く、効果がゆっくりである。ふらつきなどが少ない
・起立性低血圧がほとんどない
・薬剤耐性になりにくい
・1日1回の服用でOK
・類似薬での差があまりない
作用機序
【利尿作用】
遠位尿細管(管腔側)でのNa/Cl共輸送体を阻害する
↓
尿管腔から細胞内へのナトリウムイオンの再吸収を抑制
↓
ナトリウムの尿中への排泄を増加
↓
水分の再吸収を抑制/排泄増加
↓
利尿効果を示す
※いわゆるナトリウム利用の作用。
この利尿作用は用量依存的である。
【降圧作用】
ナトリウム利尿が起こると・・・
↓
ナトリウムの再吸収量が減少
↓
循環血液量が減量
↓
末梢血管抵抗を低下
↓
降圧作用を示す
※上記の作用のため、即効性のある降圧剤ではない。
副作用
副作用は用量依存的である。
【副作用の例】
・低カリウム血症(ループ利尿薬と併用される場合特に注意)
※心不全の方に用いる場合はカリウム値には注意が必要
※カリウム保持性の利尿剤と併用することもある
※多くは、投与開始2週間から3週間で起こることが多いと言われている
・高カルシウム血症
※骨粗鬆症の人には良いらしい
※ループ利尿薬は低カルシウム血症になるので違いの1つである。
・低マグネシウム血症
※カリウムとマグネシウムは連動しやすい
・代謝性アルカローシス
※H+の排泄亢進と重炭酸イオン(HCO3-)の体内への吸収促進や
アンモニウムイオン(NH4 +)の排泄亢進、塩素イオン(Cl-)の減少により生じる。
これにより腎臓からのカリウム排泄が亢進することも分かっている
・高尿酸血症
※URAT1を介する尿酸の再吸収が増加
・耐糖能異常
※膵臓からのインスリン分泌を低下させる
おまけ:アンジオテンシン受容体拮抗薬(ARB)との合剤の理由
LIFE試験では、ARBとチアジド系利尿薬の併用が、β遮断薬と利尿薬の併用
よりも脳卒中リスク、死亡リスクを減少させることが示されている。
糖尿病合併高血圧の予後を改善するという報告もある。
また、β遮断薬と使用すると糖代謝を悪化する可能性がある。
参考資料
植田真一郎 降圧利尿薬の位置付け 日内会誌 96:94~100,2007
Dahlof B, Devereux RB, Kjeldsen SE, Julius S, Beevers G, de Faire U,Fyhrquist F,Ibsen H, Kristiansson K, Lederballe-Pedersen O, Lindholm LH, Nieminen MS,Omvik P, Oparil S, Wedel H. Cardiovascular morbidity and mortality in the Losartan Intervention For Endpoint reduction in hypertension study (LIFE): a randomised trial against atenolol. Lancet 2002; 359(9311): 995-1003