トラセミド の特徴について簡単に整理する。最近心不全の患者に対する処方で目にするような気がする。
少しずつ使用患者が増えているのだろうか・・・フロセミドとの違いなどにも触れる。
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ループ利尿薬 の基本的な考えと使われ方について
トラセミド (ルプラック®)の特徴
効能・効果
「心性浮腫」、「腎性浮腫」、「肝性浮腫」
※心臓だけでなく、腎臓や肝臓による浮腫にも使える
※慢性心不全に使うループ利尿剤のなかで心不全の予後悪化のリスクが最も少ないと言われている
用法・用量
「通常、成人には、トラセミドとして、 1日1回4〜8mgを経口投与する。
なお、年齢、症状により適宜増減する。」
※個人的には、朝で処方されるケースをよく目にする。
重要な基本的注意にも記載されているので下記に載せる。
「夜間の休息が必要な患者には、夜間の排尿を避けるため、午前中に投与することが望ましい」
→通常の生活スタイルの人は、朝の服用が良い
※フロセミドより用量が少ない理由として
フロセミドに比較して、利尿作用で約10~30倍、抗浮腫作用で約10倍強力という特徴がある。
作用機序
ヘンレ係蹄上行脚のNa+/K+/2Cl-共輸送体を阻害
↓
Na+とK+とCL̠⁻の再吸収を抑制
↓
ナトリウム利尿
さらに、加えて・・・
遠位尿細管のアルドステロン受容体への拮抗作用がある。
抗アルドステロン作用のため、心不全にとってはメリットがある。
※尿細管細胞間を通してCa2+とMg2+の再吸収も抑制する。
→低カルシウム血症や低マグネシウム血症の原因となる
禁忌
・無尿の患者
・肝性昏睡の患者
・体液中のナトリウム、カリウムが明らかに減少している患者
・デスモプレシン酢酸塩水和物を投与中の患者
・本剤の成分又はスルフォンアミド誘導体に対し過敏症の既往歴のある患者
※デスモプレシンは泌尿器科でもらっている可能性があるので
併用薬の確認の際に注意が必要である。低ナトリウム血症のリスクが高まる。
その他の特徴
・用量依存的な利尿作用を示す
・作用時間が長い(6時間から16時間)
※ルプラック®のインタビューフォーム上は6時間から8時間
・作用発現までの時間は60分
・半減期は2時間
フロセミドとの比較
トラセミドの方が、心血管イベントがフロセミドよりも少ない。
「心不全の死亡率を低下させる」ことや「心不全での入院が減ること」が報告されている
トラセミド と抗アルドステロン作用
抗アルドステロン作用により、低カリウム血症が起こりにくく
また、RAAS系の抑制により、心臓(心筋)のリモデリングを防ぐ可能性がある。
心不全の生命予後の改善の期待が出来る。
参考資料
Murray MD. Deer MM, Ferguson J A, et al. Open-label randomized trial of toraemide compared with furosemide therapy for patients with heart failure. Am J Med. 2001;111:513-520.
辻野 健 他:心不全治療におけるループ利尿薬の位置づけ:J-MELODIC試験を受けて(AYUMI利尿薬の最新エビデンス)、医学のあゆみ243(3):2012,231-235
Cosin J, et al.:torasemide in chronic heart failure: results of the TORIC study, Eur J Heart Fail 4:2012,507-513
ルプラック®添付文書、インタビューフォーム