セマグルチド の特徴について簡単にまとめる。
ついに2021年・・・
経口GLP-1受容体作動薬が発売となった。
セマグルチドという成分としては、オゼンピック®という皮下注射剤が発売されている。その飲み薬バージョンである。
製剤的な工夫は下記の記事を参照
セマグルチド錠(リベルサス®)の製剤的工夫とインクレチンホルモン(GLP-1)について
セマグルチド錠(リベルサス®)の保険上の注意点について
セマグルチド 錠(リベルサス®)の特徴
効能・効果
「2型糖尿病」
【重要な基本的注意】
「投与する場合には、血糖、尿糖を定期的に検査し、薬剤の効果を確かめ、3~4ヵ月間投与して効果が不十分な場合には、より適切と考えられる治療への変更を考慮すること」
※効果がない場合は、継続できないので注意する。
用法・用量
「通常、成人には、セマグルチド(遺伝子組換え)として 1日1回7mgを維持用量とし経口投与する。ただし、1日1回3mgから開始し、4週間以上投与した後、1日1回7mgに増量する。なお、患者の状態に応じて適宜増減 するが、1日1回7mgを4週間以上投与しても効果不十分な場合には、1日1回14mgに増量することができる」
長くてイメージしにくいが、簡単言うと
3mgスタート。効果が十分であれば3mgのまま継続も可能
もっと効果が欲しい場合は、4週間以上経った後に
7mgに増量し、最大で14mgまで可能。
※他の剤形の同効薬と違い
1日1回の服用が必要な理由は、バイオアベイラビリティが1%と低いためである。
作用機序・薬理作用
ヒトGLP-1 アナログ であり、GLP-1受容体作動薬である。
血糖依存的にインスリン分泌を促進するため低血糖のリスクは少ない。
内因性GLP-1が標的とするGLP-1受容体と選択的に結合
↓
cAMP放出量を増加させる
↓
グルコース濃度依存的に
膵β細胞からのインスリン分泌を促進する。
※血糖が高い場合は、グルカゴン分泌を抑制する
他の糖尿病との比較
HbA1cの低下作用に注目してみる。
作用としては、強い部類に入ってきそうである。
【デュラグルチド(トルリシティ®)との比較】
セマグルチド7mg≒デュラグルチド0.75mg
※セマグルチドを14mgにすると有意差が出る。
【シタグリプチンリン(ジャヌビア®)との比較】
セマグルチド7mg>シタグリプチン100mg
※シタグリプチン100mgより効果が高いとなると
かなり期待できる。
服用上の注意点
・1日のうちの最初の食事、または、飲水の前に空腹の状態
でコップ約半分の水(約120mL以下)とともに服用する。
(起床時がおススメ)
・服用後、少なくとも30分は、飲食及び他の薬剤の服用は避ける
注意すべき副作用
一番多く見られるものは、「胃腸障害」である。
薬剤の特性として、胃の内容物の排泄を遅らせる作用があるため起こりやすい。
症状としては、「便秘」「下痢」「悪心」「嘔吐」「お腹の張り」
注意すべきタイミングは、「3mgの投与初期」「増量時」などである。
※服用開始して、しばらく後に「悪心」が出てくることがある。
→注射製剤の方は、投与直後に起こりやすい
※あくまでも傾向としてであるが、「悪心」、「嘔気」は慣れてくるが、「下痢」、「便秘」は長引くことがある。
→メーカーの返答として、原因は不明とのこと
【その他の副作用】
・上咽頭炎(因果不明)
・低血糖(起こしにくいが、インスリンとの併用時など特に注意)
飲み忘れた場合の対応
起床時に飲む必要があり、何も飲食していないのが条件であるため
飲み忘れた場合は、その日は飲まずにスキップする。
また、次の日から飲み始める必要がある。
服用時間は、多少変わっても良いが、胃の中が空っぽであることが大事である。
調剤上の注意点
・PTPシートを縦に切ってはならない。うっかりやりそうなので注意が必要である。
理由は、防湿性を守るため錠剤と錠剤の間隔として5mmが設定されているから。
(メーカーとしては、偶数日で処方するように声かけをしているとのこと。奇数日の場合、疑義照会を行うと良い)
⇒「本剤は吸湿性が強く、PTP シートで防湿しているため、原則としてミシン目以外の場所で切り離さないこと。やむを得
ず切り離す場合には、PTP シートのポケット部分を破損しないようにすること。」
2024年2月の添付文書改訂で縦に切ることが問題なくなった。原則というのは、MR曰く「薬剤師がポケットを傷つけないように
切ることは問題ないが、患者本人が切るのはおススメしないというようなニュアンスとのこと」
・一包化、粉砕(つぶし)、簡易懸濁法は、すべて出来ない(不可)
→吸湿性が高く、光に弱いため
・14mg/日の処方の場合、7mgの錠剤を2錠で調剤してはならない。
→SNACの量が多くなり、吸収が低下してしまうため。
※SNACについては別記事でまとめる予定
その他の特徴
・胃から吸収される。
・腎臓、肝臓が悪い人でも使える
→成分が血中でDPP-4によって分解されるため、腎臓や肝臓の代謝を受けない
・65歳以上でも使える
・糖尿病薬の分類の中で「体重」は減少するタイプである。
・DPP-4阻害剤との併用は不可
補足:まだ分からない問題点~ビスホスホネート製剤とセマグルチド錠(リベルサス®)の併用
似たような服用方法のものとしてビスホスホネート製剤がある。
骨粗鬆症の薬剤で「起床時」に服用するようになっている。
セマグルチド錠(リベルサス®)も起床時に服用するようになっているため
2剤同時に服用した場合の有効性・安全性などが不明なのである。
メーカーも検討していない点である(2021年時点)。
さらに、セマグルチド錠(リベルサス®)は多めの水で服用することが出来ない。
具体的には、「コップ半分の水(約120ml以下)」となっている。
理由は、多量の水(240ml)だと薬剤の吸収が悪くなることが分かっているから設定されている。
反面、ビスホスホネート製剤は「180ml以上の水」とされている。
理由は、胃腸障害などの回避するためである。
完全に相性が悪いのだ。
今後もメーカーからの対策を確認したい。
今のところの対策を下記に示す。
併用時の対策
・週1回タイプや連日タイプを服用している人は、まず月1回タイプのビスホスホネート製剤に切り替える。
・ビスホスホネート製剤を服用する日は、セマグルチド錠(リベルサス®)を服用せずに次の日から再開する。
(同時に飲まないので安全性は担保出来る)
参考資料
セマグルチド錠(リベルサス®)、添付文書、インタビューフォーム
メーカー説明会