ワーファリンと頭蓋内出血 の関連について簡単に整理する。
DOACとの違いとしてワーファリンはなぜ頭蓋内出血が起こりやすい。
その理由について触れる
※DOAC:direct oral anticoagulants
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DOACよりワーファリンを使用するケース
ワーファリンと頭蓋内出血
抗凝固薬であるワーファリン服用による頭蓋内出血発症のリスクは、飲んでいない人に比べて7~10倍以上との報告がある。
ちなみに頻度としてはワーファリン単独では、0.6%/年、抗血小板薬との併用では、1.0%/年という報告がある。
非常に多いな・・・と個人的に感じている。
ワーファリンと凝固因子の関係
ワーファリンは、ビタミンK依存性凝固因子の「合成」と「活性化」を抑制する。
ワーファリンが作用する凝固因子はⅡ、Ⅶ、Ⅸ、Ⅹである。
ワーファリンを服用したとすると・・・
飲んだすぐ、既に血中に存在している凝固因子が代謝されるまで
凝固因子ごとに時間差がある。つまり、凝固因子の分解の速度が違う。
そこでポイントとなるのが第Ⅶ因子である。
第Ⅶ因子を考える
ワーファリンが抑制する凝固因子であるⅡ、Ⅶ、Ⅸ、Ⅹの中で・・・
第Ⅶ因子は半減期がとても短い(数時間)ことが分かっている。
また、外因系凝固反応の律速段階にあるため、第Ⅶ因子は、ワーファリンによる影響を最も受けやすい凝固因子である。ワーファリンが関わる凝固因子の半減期に関しては下記の補足を参照のこと
【補足】
凝固因子と半減期
・Ⅱ:2.8~4.4日
・Ⅶ:1.5~5時間
・Ⅸ:20~24時間
・Ⅹ:1~2日
ワーファリンによる頭蓋内出血の特徴
・血種が大きい
・急性期に増大しやすい
・転帰不良
・血種増大が特徴的(発症後24時間まで)
※通常は6時間までに見られる
・PT-INR2.0以上でなりやすい
頭蓋内出血が多い理由
外因系の凝固反応は、第Ⅶ因子の影響が強い。
何か損傷があると
脳に多く存在する組織因子と第Ⅶ因子が複合体を形成することで止血機構が開始される。
ワーファリンを服用していると第Ⅶ因子が抑制されているため、
組織が損傷を受けて・・・いざ止血するぞ!って時に開始するための第Ⅶ因子が少なくなっているため
頭蓋内出血が起こりやすいのだ。
止血の機構が起こりにくい状況となっている。
逆に、DOACであれば第Ⅶ因子を抑制しないため、血液中に第Ⅶ因子が普通に存在しているため
ワーファリンと比較して止血機構が働く。
参考資料
奥山祐司. Medicina 2013; 50: 2178-2182.
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