GLP-1受容体作動薬と胃腸障害 について簡単に整理する。
注射剤と経口剤で少し違いもあるので触れる。
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GLP-1受容体作動薬と胃腸障害 について
GLP-1の作用のおさらい
GLP-1は食事の刺激によって小腸から分泌される。
GLP-1の主な作用点は、膵臓β細胞と消化管や末梢の求心性迷走神経である。
GLP-1の膵臓β細胞への作用としては、血糖依存的にインスリンの分泌を促進する。
また、α細胞からの食後の過剰なグルカゴンの分泌を抑制するため、糖代謝の恒常性を維持にも関与している。
消化管への作用としては、胃内物の排泄を遅らせたり、食欲を抑制する効果が知られている。
そのため、体重増加は起こりにくい
GLP-1受容体作動薬のおさらい
・血糖値が高い時だけ作用するため、低血糖は起こりにくい。
・消化管への作用としては、胃内物の排泄を遅らせたり、食欲を抑制する効果が知られているため、体重増加は起こりにくい。
・空腹時血糖と食後血糖を改善する効果がある
注射製剤の場合は、使い始めに胃腸障害に注意が必要である。
特に注射剤の場合、週1回製剤の方が、毎日打つタイプより消化器症状が持続しやすい
GLP-1受容体作動薬と胃腸障害
GLP-1受容体作動薬の胃腸障害は知られているが、なぜなのかというと・・・
体内のGLP-1濃度が低い段階では、インスリン分泌の促進作用、グルカゴンの分泌の抑制作用があり
GLP-1の濃度が高まってくると胃内容排出が遅れる。
そして、さらにGLP-1の濃度が高くなってしまうと悪心、嘔吐などの消化器症状が出てくることが報告されている。
この仕組みが経口剤と注射剤の胃腸障害の発現時期に違いを生んでいる。
注射剤と経口剤の違い
注射剤は一気に血中濃度が上がるので、早い段階で胃腸障害や消化器症状が出やすい。
経口剤では、服用してくと、しばらく期間が経ってから生じることがある。これは体内のGLP-1濃度が高まることで
「悪心」、「嘔吐」が起こるためであると考えられている。
症状としては、「下痢」「便秘」が起こりやすい。
※ただの胃腸障害なのか急性膵炎なのか判断が難しい場合は、画像診断をすることがある。
添付文書上の記載
【セマグルチド(リベルサス)錠】
重要な基本的注意
「急性膵炎の初期症状(嘔吐を伴う持続的な激しい腹痛等)があらわれた場合は、使用を中止し、速やかに医師の診断を受けるよう指導すること」
「胃腸障害が発現した場合、急性膵炎の可能性を考慮し、必要に応じて画像検査等による原因精査を考慮する等、慎重に対応すること」
【エキセナチド(ビデュリオン)皮下注】
重要な基本的注意
「急性膵炎が発現した場合は、本剤の投与を中止し、再投与しないこと。急性膵炎の初期症状(嘔吐を伴う持続的な激しい腹痛等)があらわれた場合は、使用を中止し、速やかに医師の診断を受けるよう指導すること」
「胃腸障害が発現した場合、急性膵炎の可能性を考慮し、必要に応じて画像検査等による原因精査を考慮するなど、慎重に対応すること」
※だいたい似たようなことが書かれている。
参考資料
リベルサス、添付文書、インタビューフォーム
ビデュリオン皮下注、添付文書、インタビューフォーム
Holst JJ et al,: Trends Mol Med 14(4) : 161-168,2008
Bettege K et al,: Diabetes Obes Metab 19 (3) : 336-347 , 2017