エルゴタミン 製剤と片頭痛について簡単に整理する。
今はトリプタン系の片頭痛薬が登場したため活躍する機会は減っているが使うケースはある。
エルゴタミン 製剤
小麦やライ麦などに寄生する麦角菌により産生されるアルカロイドである。麦角とは、菌核のことである。麦角菌の感染した穀物が穀粒ではなく硬い菌核を形成するのだ。
麦角アルカロイドとしては、リゼルグ酸,エルゴタミン,エルゴメトリン,エルゴクリスチンなどが知られている。
片頭痛の治療薬としてエルゴタミンが使われる。
代表的な、商品名としてクリアミン配合錠と言うものがある
使用されるケースは限られるが、使うケースはある。頭痛の再燃がひどい場合は考慮してもよい
作用機序・薬理作用
片頭痛は、簡単に言うと脳の血管が拡張することが生じる。
エルゴタミンは、血管収縮作用があるため、片頭痛を抑えることが出来る。
クリアミン配合錠は、この他に「無水カフェイン」「イソプロピルアンチピリン」を配合している。
イソプロピルアンチピリンは、ピリン系である。
※頭痛が起こってからでは、やや効きにくい。
副作用
消化器症状や精神的な症状などに注意が必要である。
クリアミン配合錠の副作用の頻度を下記に引用する
【クリアミン配合錠のインタビューフォームより】
「承認時迄の調査及び承認後の調査症例451例(平成2年度)において,副作用は119件(26.4%)に認められた。主な副作用は,食欲不振28件(6.2%),吐気15件(3.3%),胃部・腹部不快感11件(2.4%),嘔吐7件(1.5%)等の消化器系及びふらつき9件(2.0%),ねむけ6件(1.3%)等の精神神経系であった。」
クリアミン配合錠の禁忌
禁忌項目は本当に多い。特に注意が必要なのは、妊婦や授乳婦に使えないことである。
また、心血管系のリスクがあるため禁忌項目はチェックしておくこと。
さらに、下記の薬剤とは併用禁忌となっている
・HIV-プロテアーゼ阻害薬
・マクロライド系抗生物質
・アゾール系の抗真菌薬
・5HT1B/1D受容体作動薬(トリプタン系)
・麦角アルカロイド
※トリプタン系と同時に使えない!24時間以上空ける必要がある。
【クリアミン配合錠の添付文書】
「血圧上昇又は血管攣縮が増強されるおそれがある。なお,5-HT1B/1D受容体作動薬と本剤を前後して投与する場合は24時間以上の間隔をあけて投与すること。」
ガイドライン上の位置づけ
推奨【グレードB】
「エルゴタミン/カフェイン配合薬は痛みが中等度~重度となった頭痛には効果は少ないが,トリプタンで頻回に頭痛再然がみられる患者には使用価値がある.早期服用での効果はNSAIDsと同等もしくは劣っており,副作用として嘔吐があるため,使用は限られる.また妊娠中・授乳中の使用は禁忌である」
※数々の比較試験では、トリプタン系に劣っていることは分かっている。
エルゴタミン 製剤が使われるケース
・発作時間が48時間以上と長い場合
・頭痛の再発が多い場合(トリプタン系で頭痛の再燃が見らえるケース)
※普段からクリアミン配合錠を服用していると、いざという時のトリプタン系の使用が出来ないので注意
※痛みが中等度から高度になるとエルゴタミン製剤の効果は少ない
参考資料
クリアミン配合錠、添付文書、インタビューフォーム
慢性頭痛診療ガイドライン
The Multinational Oral Sumatriptan and Cafergot Comparative Study Group. A randomized, double-blind comparison of sumatriptan and Cafergot in the acute treatment of migraine. Eur Neurol. 1991;31(5):314-22.