バフセオ (バダデュスタット)錠の特徴について簡単に整理する。腎性貧血の治療薬として注目を集めているHIF-PH阻害剤の1つである。
バフセオ (バダデュスタット)錠の特徴について
・用量調整がシンプル
・薬物相互作用に注意する。特に鉄剤
効能・効果
腎性貧血
【効能・効果に関連する注意】
「赤血球造血刺激因子製剤で未治療の場合の本剤投与開始の目安は、保存期慢性腎臓病患者及び腹膜透析患者ではヘモグロビン濃度で11g/dL未満、血液透析患者ではヘモグロビン濃度で10g/dL未満とする」
※開始する際は、一応Hbの目安が設定されているので注意すること
用法・用量
「通常、成人にはバダデュスタットとして、1回300mgを開始用量とし、1日1回経口投与する。以後は、患者の状態に応じて投与量を適宜増減するが、最高用量は1日1回600mgまでとする。」
※他のHIF-PH阻害剤に比べ用量調整しやすい印象
重要な基本的注意
「ヘモグロビン濃度が、4週以内に2.0g/dLを超える等、急激に上昇した場合は速やかに減量又は休薬する等、適切な処置を行うこと」
※Hb値の増減で量を変えなくてよく、Hb値で迷うことがない
※食事に関係なく服用可能。相互作用を避けるため「就寝前」「寝る前」に処方されるケースがある
※増量する際は、4週間空けて150mgずつ
※一度止めて再開する場合は、1段階(150mg)少ない量で再開すること
薬理作用・作用機序
プロリン水酸化酵素 (PHD1~PHD3 の活性化を阻害
↓
低酸素誘導因子(HIF-α)を安定化
※水酸化されていないHIF-αが蓄積される
↓
HIF 応答性であるエリスロポエチン(EPO)遺伝子の転写促進
↓
内因性のエリスロポエチンの産生を亢進
↓
ヘモグロビンと赤血球産生を亢進
※低酸素誘導因子HIFは、心不全、脳卒中、肺疾患、気圧変化及び網膜損傷などでの低酸素症に対する応答を制御するマスター転写因子
正常酸素状態では、HIF-αは分解される。
※プロリン水酸化酵素(PHD)は転写因子である低酸素誘導因子(HIF)αを水酸化し、ユビキチンプロテアソーム系による HIFαの分解を促進させる酵素
副作用
比較的多い副作用は、「胃腸障害」や「高血圧」である。1%から5%未満
胃腸障害である悪心、下痢、軟便などは、服用開始2週間以内に起こりやすい。服用初期に多い
重大な副作用は、「血栓塞栓症」である。
相互作用
・多価陽イオンとキレートを作ってしまい、バフセオ (バダデュスタット)の吸収が悪くなる。
多価陽イオンというのは、カルシウム、鉄、マグネシウム、アルミニウム等を指す。
具体例として、貧血治療で使われる鉄剤や高リン血症治療薬、酸化マグネシウムなどが結構併用されているケースがある。
【対策】
前後2時間以上空ける必要がある
「寝る前」「就寝前」などに バフセオ (バダデュスタット) を飲む
・BCRPを基質とする薬剤との併用により、 バフセオ (バダデュスタット) がBCRPを阻害するため、BCRPを基質とする薬剤の血中濃度が高くなる。
具体例として、一部のスタチン系の薬剤が意外と問題となる。該当するのは、ロスバスタチン、シンバスタチン、アトルバスタチンである。
【対策】
服用しているスタチン系の薬剤をピタバスタチン、プラバスタチンなどに変更する
※他にもOAT3の基質であるフロセミドの血中濃度を上げるなどの注意もあるため確認しておくこと
その他の特徴
・剤形数が少ない
・PTPシートからダーブロックより出しやすい
・300mgを使いたい場合、150mg2錠でも保険的に通っている地域あり。院内採用で迷うのであれば確認しておくと良い
・バフセオは、一包化可能、OK
・バフセオは、粉砕、簡易懸濁可能、OK
※簡易懸濁に関して、適1、8Frチューブ通過可能
参考資料
バフセオ、添付文書、インタビューフォーム
田辺三菱製薬、勉強会