腫瘍熱 とナプロキセン(ナイキサン)について簡単に整理する。
「腫瘍」とあるので「がん患者」における話である。
腫瘍熱 とナプロキセン(ナイキサン)
エビデンスが豊富であり、即効性と効果の持続性からナプロキセンが使われているケースが多い
腫瘍熱とは?
がん患者では、発熱自体は多い症状である(7割程度という報告もある)。
感染症や化学療法、薬物による発熱など原因は様々である。発熱のほとんどは、感染症や薬物によるものである。
「腫瘍熱」は、発汗や炎症はあるが、悪寒のような症状は少ないのが特徴である。非感染性の発熱だが明確な診断基準はない。
がん患者の5%~27%とも言われている。発熱が定期的にあるが、自然に解熱し、全身状態が良い傾向なのが特徴である。
転移している部位が多いほど腫瘍熱は起きやすい。例えば、血液のがんや腎細胞がん、肝細胞がん、すい臓がんの人に起こりやすい。
※CRPは5から10で推移することが知られている
【腫瘍熱の機序(考えられているもの)】
腫瘍自体あるいは、腫瘍壊死物質を貪食した好中球やマクロファージがインターロイキン1(IL-1)、インターロイキン6(IL-6)、腫瘍壊死因子(TNF)、インターフェロン(IFN)などの発熱性サイトカインを産生
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視床下部のあたりに移動
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プロスタグランジン E2(PGE2)の産生と分泌が促進
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PGE2が体温調節中枢(Preoptic Anterior Hypothalamus-Poah:PAHP)に移動
(体温調節中枢は、体温を一定に調節する働きをしており、この設定されている体温をセットポイントと言う)
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セットポイントが上昇する。
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血管収縮作用により熱放散が抑制、筋収縮による熱産生が促進
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発熱
ナプロキセン(ナイキサン)
腫瘍熱には、昔からナプロキセンが使われている。他のNSAIDsでも効果はあるが、ナプロキセンの方が、エビデンスが豊富であり、病院などでも採用されていることがある。特徴としては、即効性があり、半減期が長い。
ナプロキセンで効果が出ない場合などに他のNSAIDsが考慮されたりする。
ナプロキセン以外の主なNSAIDsの単回投与時の半減期は1時間から2時間だが、それに比べてナプロキセンの半減期は14時間である。
そのため、1日2回飲むと24時間、発熱の抑制が期待できる。効果のピークとしは飲んでから2時間から4時間。
【用法・用量】
定型的服用する場合は、ナプロキセン400~600mg 分2~3、あるいは、発熱時に頓服的に指示されることもある
※アセトアミノフェンは反応がしにくい
※症状が緩和しない場合は、デキサメタゾンやベタメタゾンが使われることもある
参考資料
Ann Intern Med 55 : 932-942,1961
CANCER RESEARCH UK. Cancer and fever
ナイキサン、添付文書、インタビューフォーム