ブコラム 口腔用液(ミダゾラム)の特徴について簡単に整理する。
迅速簡便な頬粘膜投与タイプである。
内閣府、文部科学省、厚生労働省から発出された2022年7月19日付の事務連絡により、投与できる職域が広がっている。
その辺も取り上げる。
ブコラム 口腔用液(ミダゾラム)の特徴
・頬粘膜から吸収させる
・今後教職員やスタッフが使えるケースが出てくる
効能・効果
「てんかん重積状態」
※決して「てんかん」に限った薬剤ではないということ
用法用量
「通常、修正在胎52週(在胎週数+出生後週数)以上1歳未満の患者には、ミダゾラムとして1回2.5mg、1歳以上5歳未満の患者には、ミダゾラムとして1回5mg、5歳以上10歳未満の患者には、ミダゾラムとして1回7.5mg、10歳以上18歳未満の患者には、ミダゾラムとして1回10mgを頬粘膜投与する」
※3か月から18歳まで使うことが出来る。
※体重ではなく、年齢区分によって量が違う。
【使用場所や使用者による違い】
・保護者や介護者(教職員など)は、1回分のみを使うことが出来る。追加投与不可
・医師などは追加投与することが出来る
・3~6か月の乳幼児は、医療機関内でのみ投与出来る。
てんかん重積状態とは
「てんかん重積状態」とは、発作が5分以上続いたり、短い発作が意識の戻らないうちに繰り返し起こる状態をいい、原因は、「てんかん」の他、子どもでは「熱性けいれん」、「急性脳症」、「細菌性髄膜炎」などによるものがある。
発作が起こるメカニズムを少し説明すると、脳の神経細胞の電気信号は、興奮系の信号と抑制系の信号でバランスを取っている。
何かの原因で抑制系の電気信号に関わるGABAの働きが弱くなると・・・
興奮系の電気信号が過剰になり発作が起こってしまうのだ
※熱性けいれんは、生後6か月から5歳までに起こる。38度以上の発熱時に白目をむいたり、手足が震えたりする。
※インフルエンザや単純ヘルペスなどで「急性脳症」、「急性脳炎」を起こすことがある。
早期治療の重要性
一般的に、発作自体は1分から2分で止まる。しかし、5分以上発作が続いてしまうと自然に止まりにくくなってしまう。
この発作が、30分以上続くと脳に重い障害を残す可能性が高くなる。場合によっては命にかかわるので早期治療が必要である。
ブコラムは、小児てんかん重積状態の患者に対して奏効率が80%である。(国内第三相試験より)
製剤的な特徴
・頬粘膜からの吸収のため、肝初回通過効果を受けず効果が速い。
・頬粘膜からの吸収製剤のため、けいれん発作時に歯を食いしばっていても投与出来る。
・静注からの変更となり、ルート確保が不要→より速く効果を発揮できる。
・室温保存のため事前に準備しやすい。むしろ冷蔵庫、冷凍庫での保管はNG。
・ブラスチックチューブのフタ側を上向きにして立てて保管する必要がある。
注意する副作用
「呼吸抑制」には注意が必要である。呼吸が浅くなることがあるので観察が重要。
重要な基本的注意(抜粋)
「原則として本剤投与後は救急搬送の手配を行い、10分以内に発作が停止しない場合や薬剤を全量投与できなかった場合、浅表性呼吸や意識消失等が認められた場合は、医療機関に救急搬送すること。その際、本剤投与状況の確認のため、使用済みのシリンジを医療従事者に提示すること。」
投与する時のワンポント
メーカーの投与説明書には、「歯茎を頬の間にゆっくり注入」とあるが、
「ゆっくり」というのは、「時間的」というより「丁寧に」というニュアンスがある。発作を目の前にすると焦ってしまうので「丁寧に」を心がけて投与してほしいとのこと。
また、プランジャーという指で押す部分があるが、いきなり親指で押すと「硬い」。
アドバイスとして、最初にプランジャーを引いて中を陰圧にすることで格段に押しやすくなるのでおススメである。
内閣府、文部科学省、厚生労働省から発出された2022年7月19日付の事務連絡「学校等におけるてんかん発作時の口腔用液(ブコラム®)の投与について」
文部科学省等からの照会事項(原文のとおり)
「学校、保育所、幼保連携型認定こども園、放課後児童健全育成事業、放課後子供教室、認可外保育施設等(以下「学校等」という。)で在籍する幼児、児童、生徒又は利用する児童(以下「児童等」という。)がてんかんによるひきつけを起こし、 生命が危険な状態等である場合に、現場に居合わせた教職員を含む職員又はスタッフ(以下「教職員等」という。)が、口腔用液(「ブコラム®」)を自ら投与できない本人に代わって投与する場合が想定されるが、当該行為は緊急やむを得ない措置として行われるものであり、次の4つの条件を満たす場合には、医師法違反とはならないと解してよろしいか。
① 当該児童等及びその保護者が、事前に医師から、次の点に関して書面で指示を受けていること。
・学校等においてやむを得ずブコラム®を使用する必要性が認められる児童等であること
・ブコラム®の使用の際の留意事項
② 当該児童等及びその保護者が、学校等に対して、やむを得ない場合には当該児童等にブコラム®を使用することについて、具体的に依頼 (医師から受けたブコラム®の使用の際の留意事項に関する書面を渡して説明しておくこと等を含む。) していること。
③ 当該児童等を担当する教職員等が、次の点に留意してブコラム®を使用すること。
・当該児童等がやむを得ずブコラム®を使用することが認められる児童等本人であることを改めて確認すること
・ブコラム®の使用の際の留意事項に関する書面の記載事項を遵守すること
④ 当該児童等の保護者又は教職員等は、ブコラム®を使用した後、当該児童等を必ず医療機関で受診させること。」
上記照会への厚生労働省医政局医事課からの回答(原文のとおり)
「貴見のとおり。なお、一連の行為の実施に当たっては、てんかんという疾病の特性上、学校、保育所、幼保連携型認定こども園、放課後児童健全育成事業、放課後子供教室、認可外保育施設等において在籍する幼児、児童、生徒又は利用する児童のプライバシーの保護に十分配慮がなされるよう強くお願いする。」
参考資料
日本神経学会 てんかん診療ガイドライン2018 第一版:医学書院;2018.76
Nishiyama I , et al.:Epilepsy Res 2011;96(1-2):88-95
内閣府、文部科学省、厚生労働省から発出された2022年7月19日付の事務連絡
「学校等におけるてんかん発作時の口腔用液(ブコラム®)の投与について」
ブコラム口腔用液、添付文書、インタビューフォーム