ホットフラッシュと漢方薬の使い分けについて簡単にまとめる。
ホットフラッシュは女性のイメージがあるかもしれないが、男性にも出ることがあります
ホットフラッシュにおける漢方薬の使い分けを整理したいと思う。
ホットフラッシュと漢方薬
ホットフラッシュに対するざっくりとした使い分けのポイント!
漢方的な考えになるが「イライラ感」や「のぼせ」の症状に加えて
◎精神的な症状(不安、心配性)を伴う場合⇒加味逍遥散
◎「慢性疼痛」や「凝り」を伴う場合⇒桂枝茯苓丸
◎ひどい便秘に加えて「のぼせ」や「イライラ感」が強い場合⇒桃核承気湯
ホットフラッシュとは?原因など
性ホルモンである女性ホルモンや男性ホルモンは、脳に存在する体温を調節する機能に関わっている。
更年期を迎えたり、がんの治療によって性ホルモンが低下し、体温調節に関わっている自律神経のバランスが崩れることが原因となって、
冷え・ほてり・のぼせ・発汗などの症状が出てくる。
更年期に起こることが多いことから更年期障害の代表的な症状として有名である。
ただ、先ほども触れたが、がん治療においてホットフラッシュが生じることがあるので触れたいと思う。
がん治療におけるホットフラッシュ
がん治療における・・・ホットフラッシュの「ほてり」・「のぼせ」・「発汗」の原因となる例を示す。
◎外科的な手術による卵巣や精巣の摘出
◎卵巣や精巣の機能に影響を与える薬の使用
◎ホルモン療法の薬の内服(乳がん、前立腺がん等)
◎放射線治療(全身・骨盤内・脳への照射)
【乳がんの例】
乳がん治療の補助療法としてタモキシフェンを使用した場合
タモキシフェンによる抗エストロゲン作用で自律神経による血管の拡張、収縮を乱れさせ、体温調節が上手く出来なくなる。
そのため、ホットフラッシュ(のぼせ・発汗)の原因となってしまう。
【前立腺がんの例】
前立腺がんの腫瘍は男性ホルモン依存性のもので、ホルモン療法によって男性ホルモンを抑えたり、
あるいは、手術で精巣を摘出すると、
結果として性ホルモンのバランスが崩れてホットフラッシュの症状が出てしまう人がいる。
前立腺がんのホルモン療法でホットフラッシュの経験がある人は6割から8割いると言われている。
ホルモン療法の薬物治療を開始して数週間後に生じるケースが多い。また、数か月経つとホットフラッシュの症状が楽になるが、症状がひどい場合は薬物療法などが必要になってくる。
ホットフラッシュと漢方薬
ホットフラッシュの治療としてよく使われる漢方薬として
「加味逍遥散(カミショウヨウサン)」
「桂枝茯苓丸(ケイシブクリョウガン)」
「桃核承気湯(トウカクジョウキトウ)」
などがある。
漢方薬であり、「エストロゲン作用がない」のがポイントかと思う。
エストロゲン依存性の腫瘍(子宮体がん、子宮内膜がん)にも使いやすい。
そこで3つの漢方薬について簡単な使い分けに触れたいと思う。
【ホットフラッシュにおける使い分け】
ホットフラッシュの症状は前提として下記のような使い分けをしてみてはどうだろうか
なるべく漢方的な専門用語を入れずにイメージで説明すると・・・
◎「加味逍遥散」は「イライラ感」に加えて、不安が強い、心配がちな症状がある人に向いている。
◎「桂枝茯苓丸」は、「加味逍遥散」と使い方は似ているが、「イライラ感」に加えて「肩こり」、「腰痛症」などの慢性疼痛、「凝り」がある人に向いている。
◎「桃核承気湯」は、「イライラ感」や「のぼせ」の症状が強く「便秘がち」な人に向いている
※便秘の程度により、朝は桂枝茯苓丸、夕は桃核承気湯など併用する医師もいる。
【桂枝茯苓丸の補足】
漢方的な考えの「瘀血(おけつ)」に使われる。瘀血は、西洋医学的な考えで「微小循環障害」に近いと言われている。
女性の月経に関連するトラブルに良く使うイメージだが、ホットフラッシュの治療では定番となっている。
前立腺がんの治療において・・・
男性にもホットフラッシュが生じることが、しばしばある。
そのため、女性のイメージ強い桂枝茯苓丸が、男性にも処方されるのだ。
【桃核承気湯の補足】
桃核承気湯は大黄を含んでいるため、センノシドなどの薬が不要になる可能性がある。
腸を刺激するタイプの下剤は減薬できるかもしれないので試してみる価値はあるだろう。
参考資料
ツムラ桂枝茯苓丸、添付文書
ツムラ加味逍遥散、添付文書
ツムラ桃核承気湯、添付文書