オピオイドによる便秘の原因と対策についてざっくり解説したいと思う。便通異常症診療ガイドライン2023を踏まえてまとめる。
モビコール配合内用剤の使いやすさもあるので・・・その辺りについても触れてみたいと思う
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オピオイドによる便秘の原因と対策
モビコール配合内用剤の使いやすさに注目してほしい!
便秘の原因の例(がん患者)
オピオイドを使うケースは様々な病態があったり、併用薬も多くなる傾向があるため原因も多くなる。
その中で、いくつ例を挙げたいと思う。
【がん患者の場合】
〇高カルシウム血症
⇒体液性高カルシウム血症(扁平上皮癌、乳がん、前立腺がん、卵巣がんなど) ※骨転移を伴わない
⇒溶骨性高カルシウム血症(転移固形腫瘍、多発性骨髄腫、リンパ腫など)
〇腹水
〇腫瘍による圧迫
〇イレウス
〇手術歴(結腸・直腸・肛門など)
等
【原因薬剤の例】
〇抗コリン作動薬の開始・増量時
〇抗がん剤の使用時
〇利尿剤
〇鉄剤
※オピオイドの開始、増量時注意(反復投与していくと便秘が出やすい)
等
オピオイドによる便秘の機序
今回のテーマはオピオイドなので・・・
オピオイドによる便秘について掘り下げていく。
ざっくり言うと
「腸の動きの低下」「水分吸収の増加」「肛門括約筋の緊張増加」が原因となり
結果として、便が硬くなり出づらくなる。
【どんな事が起こっているのか?】
〇小腸の運動を抑制する
〇十二指腸において消化液の腸管分泌(消化低下)を抑制
⇒腸の中の内容物の粘調度が増す(運動性低下)
〇大腸における蠕動運動の減少、緊張増加
⇒便の通過を遅延させる
〇水分の吸収の増加⇒便の硬さ増す
〇肛門括約筋の緊張が高くなる
⇒反射低下⇒排便しにくい
※オピオイドによる「便秘」に関して耐性形成がない
【オピオイドの機序(詳細)】
腸管に存在するμ受容体を活性化することで
腸管神経叢におけるアセチルコリンの遊離を抑制する。
さらに、腸管壁からセロトニンを遊離させ、腸管平滑筋の持続的な緊張を高めてしまい
蠕動運動の低下が引き起こる。
便秘の治療をする前に確認したいこと
患者毎に「便秘」の悩みは様々ある。
患者の背景や状況により下剤選択をしていくとよりよい管理が出来る。
【確認するポイントの例】
〇患者の状態の確認
⇒「腸閉塞」、「脱水」、「代謝異常でない」など
〇オピオイド以外の便秘の原因薬剤の有無
〇便の状態(硬さなど)、排便回数、残便感の有無
〇食事の摂取状況
〇腹部膨満感の有無
〇腹圧がかけられるか
その他、「排泄場所」、「排便方法・状況」、「従来の排便習慣」なども参考となる。
排便状況による対策は・・・?
〇便が硬い、水分が少ない⇒浸透圧性下剤
〇腸蠕動運動が低下⇒大腸刺激性下剤やルビプロストンなど
〇下痢と便秘を繰り返している場合や、便の性状水分を多く含んでいる場合
⇒ポリカルボフィルカルシウムやルビプロストンなど
〇オピオイドスイッチングする
⇒「モルヒネ」「オキシコドン」を「フェンタニル」へ変更すると便秘が改善することがある。
オピオイドの中でフェンタニルが副作用の頻度が少ない。
便通異常症診療ガイドライン2023を踏まえての下剤選択
オピオイド誘発性便秘症の場合・・・
オピオイド以外の薬剤の原因のこともあるが個々の病態に応じて下剤を選択することを前提に選択する。
また、コストも考えて薬剤選択をする配慮も必要となってくるだろう。
最初は、浸透圧性下剤
(塩類下剤:酸化マグネシウム/高分子化合物PEG:モビコール配合内用剤)を使うか・・・
あるいは、腸管の動きが鈍ければ・・・刺激性下剤(高用量の長期連用は避ける)を使用する。
また、明らかにオピオイド誘発性の便秘であれば最初からナルデメジン(スインプロイク®)を使用するのも良い。
浸透圧性下剤や高分子化合物で効果がない場合、ナルデメジンを使用するか
一度ルビプロストン(併用も考慮) を使ってみて、さらにダメならナルデメジン使用していく
ガイドライン上は、こんなフローチャートとなっている
※酸化マグネシウムの場合:高マグネシウム血症に注意
※刺激性下剤:長期連用しにくい
※ルビプロストン:妊婦禁忌
※ナルデメジン(スインプロイク):他の下剤に比べ高薬価
※便通異常症診療ガイドライン2023では、PEG(ポリエチレングリコール)について記載された。
製品名としてはモビコール配合内用剤がある。少しおまけとして特徴を載せておく
おまけ:モビコール配合内用剤の特徴
他剤との特徴的な違いを箇条書きしておく
〇2歳以上の小児にも適応がある
〇電解質を添加しているので電解質バランスを維持し浸透圧を適正なレベルに保持する
〇体内にほとんど吸収されない
〇慎重投与や薬物相互作用も確認されていない
参考資料
日本消化器学会編,便通異常症診療ガイドライン2023-慢性便秘症.南江堂,2023,p101