DOACの比較 や違いは色々あるが、今回は出血に関する副作用を判断するための検査値について簡単にまとめる。
直接経口抗凝固作薬DOAC:direct oral anticoagulants
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プラザキサとAPTT ~測定する意義など~
DOACの比較
ダビガトラン(プラザキサ)は、抗トロンビン薬であり、
リバーロキサバン(イグザレルト)、エドキサバン(リクシアナ)、アピキサバン(エリキュース)は、Xa阻害薬に分類される。この違いが検査値の使えるかどうかに関係してくる。
ポイント
細かい話はせずにポイントだけまとめる。
今回のケースにおいて、APTTやPTは一般的に効果判定に用いるのではなく、副作用(出血)と原因薬剤の判断のために用いる。ここがワーファリンでのPT-INRと大きな違いである。ワーファリンはPT-INRから投与量などを決めたりする。
【ダビガトラン(プラザキサ)】
血中濃度とAPTTの相関が知られており、副作用の判断としてAPTTを用いることが出来る。
血中濃度に依存的
【リバーロキサバン(イグザレルト)、エドキサバン(リクシアナ)】
APTTよりPTの方が延長しやすい。PT延長で出血リスクが上昇する。この2つの薬剤ではPTを用いると良い。
血中濃度に依存的
【アピキサバン(エリキュース)】
APTTとPT共に延長しにくい。副作用の判断として両方とも使えない。
薬剤による検査値への影響が少ない
注意点
・試薬によってバラつきが大きい。施設ごとに基準を設定しておく
・試薬によって数値が違うため施設間の比較が難しい
・採血時間が大切になってくる。血中濃度がピークの値かトラフの値か・・・
医師によって、飲み始めの時はピーク値を使ったり、長期服用中は、トラフ値を使ったりする。
※ピーク値の測定としては、服用してから2時間から4時間後に採血
※トラフ値の測定としては、一旦朝の服用を中止して午前中に採血
添付文書上の記載
とりあえず効果判定のモニタリングには、APTTなどは不向きと書かれている。
一部抜粋するが、しっかり読むと面白いのでおススメである。
【ダビガトラン(プラザキサ)】
「aPTT(活性化部分トロンボプラスチン時間)は、出血している患者では過度の抗凝固作用を判断する目安となる可能性がある。日本人を含む第Ⅲ相国際共同試験においては、トラフ時aPTTが80秒を超える場合は大出血が多かった。」
【リバーロキサバン(イグザレルト)】
「プロトロンビン時間国際標準比(PT-INR)は本剤の抗凝固作用について標準化された指標でなく、活性化部分トロンボプラスチン時間(aPTT)等の凝固能検査は、本剤の抗凝固作用をモニタリングする指標として推奨されない」
【エドキサバン(リクシアナ)】
「プロトロンビン時間-国際標準比(PT-INR)や活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)等の通常の凝固能検査
は、本剤の薬効をモニタリングする指標とはならないので、臨床症状を十分に観察すること。」
「エドキサバンはin vitroでヒト血漿におけるPT、APTT及びトロンビン時間(TT)を延長した。その凝固時間延長作用の強さはPT>APTT>TTの順であった」
「エドキサバンは単回経口投与により用量依存的に血栓形成を抑制した。ラット静脈血栓モデルにおいて、エドキサバンは抗血栓作用を示す用量でAPTTに影響せずにPTを延長した」
【アピキサバン(エリキュース)】
「凝固能検査(プロトロンビン時間(PT)、国際標準比(INR)、活性化部分トロンボプラスチン時間(aPTT)等)
は、本剤の抗凝固能をモニタリングする指標とはならないため、本剤投与中は出血や貧血等の徴候を十分に観察すること」
参考資料
Cuker A, et al, Hematology 2015; 2015: 117-24
Garcia D, et al:J Thromb Haemost. 2013;11 (2):245-52.
北島 勲:医薬ジャーナル. 2014;50(2):97-102.
各薬剤の添付文書