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在宅医療 胃腸・消化器関連

オピオイドによる悪心・嘔吐の原因と対策について

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今回は、オピオイドによる悪心・嘔吐の原因と対策について概説する。制吐剤使用時の注意点や制吐剤で改善しなかった場合の対応まで簡単に整理している。

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オピオイドによる悪心・嘔吐の原因と対策

▶悪心・嘔吐の発現は、オピオイドの血中濃度依存的で導入時や増量時に多い。1~2週間で耐性を生じる。
▶悪心・嘔吐のタイプにより制吐剤を選択する。
▶中枢性のドパミン受容体遮断薬としては、ノバミン®が使いやすい。

オピオイドによる悪心・嘔吐の特徴

オピオイドによる悪心・嘔吐は、オピオイド導入のときに30~50%程度起こる。だいたい開始や増量の初日から3日以内に出現しやすい。1~2週間で耐性が生じる(慣れる)ことが知られているが、吐き気が起こると、患者がオピオイドの服用自体を嫌になってしまい、服薬アドヒアランスが低下することがあるので対策が必要である。オピオイド服用中の患者に悪心・嘔吐が持続的に生じており、オピオイドの血中濃度依存的に出現する場合は、オピオイドが原因だと考えられる。吐き気の出現時間と最高血中濃度到達時間(Tmax)が重なることが知られている。参考として、オピオイドを開始したり、増量して1週間以上経ってから吐き気が生じた場合は、オピオイド以外の原因が考えられる。以前は、予防的に制吐剤を服用することがあったが、錐体外路障害などの副作用の問題があるため必ず必須というわけではない。ただし、悪心・嘔吐は服薬アドヒアランスに関わるため制吐剤を前もって処方しておくのも1つの手である。

発生機序と対策

オピオイドによる悪心・嘔吐の発生機序としては、以下の3つが考えらえる。
①延髄に存在する化学受容器引き金帯(CTZ:chemoreceptor trigger zone)への刺激
②前庭器に発現しているオピオイドμ受容体を刺激
③消化管への刺激による求心性迷走神経を介したCTZ刺激
この3つのパターンの特徴と選択薬を整理していく。

【①⇒中枢性のドパミン受容体遮断薬】
オピオイドは、延髄の第四脳室底にあるCTZに多く分布しているオピオイドμ受容体を刺激してドパミン遊離を促す。放出されたドパミンが、ドパミンD2受容体を活性化することで悪心・嘔吐を引き起こす。オピオイドによる悪心・嘔吐は、このドパミン受容体刺激により引き起こされることが最も多いと考えられている。そのため、プロクロルペラジン(ノバミン®)などの中枢に直接作用する「ドパミン受容体遮断薬」が制吐剤の第一選択薬となる。他には、ハロペリドール(セレネース®)やオランザピン(ジプレキサ®)、リスペリドン(リスパダール®)、ペロスピロン(ルーラン®)なども候補となる。

【②⇒ヒスタミンH1受容体拮抗薬】
オピオイドが前庭器に発現しているオピオイドμ受容体を刺激することでヒスタミンが遊離される。このヒスタミンが前庭神経を介してCTZもしくは嘔吐中枢を刺激して悪心・嘔吐が起こってしまう。CTZが関与する吐き気との違いは、体を動かした際に吐き気が悪化したり、めまいが生じるところである。例えば、「頭を動かすと気持ち悪い」「車酔いのような感じ」などの症状の訴えがある。この場合は、前庭器が関わっている可能性があるので「ヒスタミンH1受容体拮抗薬」が有効なことがある。ジフェンヒドラミン(トラベルミン®)、ヒドロキシジン(アタラックス®)などが使われる。

【③⇒消化管の動きを促す薬剤】
オピオイドは消化管を刺激する。そのせいで消化管蠕動運動が抑えられることで食べたものが停滞していまう。胃腸の動きが悪いことで胃の内圧が亢進し、求心性迷走神経を介してCTZを刺激することで悪心・嘔吐を引き起こす。胃腸の動きが悪いことが原因なので、選択する薬剤としては、消化管の動きを促すモサプリド(ガスモチン®)、ドンペリドン(ナウゼリン®)、メトクロプラミド(プリンペラン®)などが候補となる

制吐剤使用時の注意点

〇オピオイドによる吐き気は1~2週間で耐性が生じるため、制吐剤の長期使用は避ける
〇抗ドパミン薬を使用する場合、錐体外路障害が起こる可能性がある
〇制吐剤を使用する際は、1~2週間で減量もしくは中止を考える

制吐剤で改善しない場合の対策

制吐剤を使用しても改善しない場合は、以下を試してみると良い。
▶原因が異なる可能性があるので別の制吐剤を使う
▶オピオイドの最高血中濃度が低下するような工夫
⇒1回の投与量を減らし、服用回数を増やす
▶オピオイドの最高血中濃度と食事時間が重ならないようにする
▶オピオイドローションを行う
▶内服薬から静注や持続皮下注へ切り替える